球道雑記BACK NUMBER
悪夢のドラフト指名漏れから2年。
日本ハム3位・生田目翼と武田久。
posted2018/11/13 08:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
名前が読み上げられるまでの時間が随分と長く感じた。
北海道日本ハムからドラフト3位で指名を受けた社会人野球・日本通運の生田目(なばため)翼のことである。
2018年10月25日、プロ野球ドラフト会議。東京都・港区にある日本通運本社には複数の報道陣が集まり、1巡目の指名が始まると、一斉にカメラを構えてその瞬間を待っていた。
最速155キロを誇る社会人野球屈指の速球派右腕。前評判も高く1巡目もしくは2巡目での指名になるだろうと会見場に集まる多くの者達が感じていた。
しかし、結果は違った。1巡目はおろか、2巡目の指名が終わっても、いっこうに彼の名前が呼ばれない。思いもしなかった会議の流れに、記者達は一斉に色めき立った。
「少し不安もあったけれど」
そして――。
会議が始まって1時間20分が過ぎた頃、ようやく彼の名前が読み上げられる。生田目は少し驚いたように口を小さく尖らせると、隣の席に座る日本通運・藪宏明監督とがっちり握手を交わした。
「想定範囲内じゃないですけど、3位くらいでは選んでいただけるかなというのはあったので、呼んでいただいてホッとしている部分はあります」
藪監督から一言声をかけられると、これまでの様々な記憶が蘇ったのかしばし俯いて目頭を押さえた。
「2年前もプロ志望届を出させていただいて……。ちょっとその悪夢が蘇るじゃないですけど、少し不安もありました。呼ばれてホッとした部分はあります」
それまでそわそわとした空気が流れていた会見場も一気に和やかな雰囲気に包まれる。
安堵感、まさにそれだろう。
取材する側も、される側も笑顔が絶えないとても温かい光景がそこに広がっていた。