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113連敗ハルウララに会いに行く。
ほしよりこが描くワガママな素顔。 

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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photograph byWataru Sato

posted2018/10/29 17:30

113連敗ハルウララに会いに行く。ほしよりこが描くワガママな素顔。<Number Web> photograph by Wataru Sato

Number初寄稿のほしよりこさんによる「ハルウララは今」。発売中のNumber964号に掲載。

ハルウララへの興味深い見解。

 そもそもハルウララの連敗が話題になり始めたのは2003年ごろのことだ。新聞が連敗ぶりをとりあげ、ワイドショーや女性週刊誌などがこぞって高知に取材にでかけた。当時は低迷していた高知競馬には驚くほどのひとが押し寄せ、多種多様なハルウララグッズが販売された。そして、なんとあの武豊が騎乗する機会まで用意されている。

 もちろん、勝つためにレースに出ることが宿命づけられている競馬界で、連敗し続ける馬が注目を浴びることへ「人気とりだ」「ミーハー」との批判もあったのを覚えている。

 Numberで数多くの名作を残し、競馬を愛したライターの故・阿部珠樹さんが、小誌の『君は「ハルウララ」を買えるか』(2003年10月30日号)と題した記事で、フィーバーに沸く高知の競馬場を訪ねて、ハルウララの馬券を買うかどうか迷い、結局、買わなかったと書いている。そしてこんな味わい深い見解を示している。

「おそらく、ハルウララの馬券を買った人は、未来よりも過去を共有したいと願っているのだろう。昨日の仕事の失敗、おとといの家族との言い争い、遠い子供時代のつらい思い出、そうしたものを慰めてくれそうな相手としてハルウララを選んだのではないか。そうした馬の選び方、愛し方を否定するつもりはないが、一方で、競馬の楽しみからは少し外れているようにも感じられる。馬と過去だけを共有するのは好みじゃない。だから買わなかった」

 普段は競馬場に行かない多くの人々の心をつかみ、玄人筋からは全面的には支持されず、でも記憶に残る――。現役時代のハルウララはそんなウマだった。

うごめく人の欲に翻弄されて。

 だが、2004年を最後にレースを引退して以降、2012年に安息の地であるマーサファームに預けられるまで、ハルウララの消息を伝えてきたのは、もっぱら週刊誌だった。

<美人馬主が独占告白「ハルウララは怪しいカネに弄ばれた」>(「週刊ポスト」2004年10月8日号)

<ハルウララ”引退後”の元気な姿を千葉で発見! 12月から113連敗の経験を生かしてセラピストに>(「FLASH」2006年12月12日号)

<113連敗「ハルウララ」に「ディープインパクト」種付け計画>(「週刊新潮」2009年12月24日号)

 これらの見出しだけでもわかるが、記事を読むと大人気になった馬だからこそ、その周辺でうごめく人の欲に翻弄されてきたことが伝わってきた。ちなみにディープインパクトだけでなく、ステイゴールドとの種付け計画が持ち上がったこともあったそうだ。だがどちらも実現せず、ハルウララは繁殖の経験がない。

【次ページ】 馬房に『ウマ娘』のシール。

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