スポーツ百珍BACK NUMBER
運動会での「かけっこ上達法」、
ヒントは電車の車輪とAKBの曲?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2018/09/24 08:00
リオ五輪100m準決勝で同組だったウサイン・ボルトと山縣亮太。言ってみれば、かけっこの世界的頂点だ。
つま先着地は「地面と73度」。
――ではボルト選手や山懸選手から、ぐーっとレベルを小学生まで持っていくと、どうなるんでしょう。
「まず加速とトップスピードについては、電車をイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。電車が出発する時に加速しますね。その瞬間、乗車している私達は進行方向とは逆側に体が持っていかれる。これを慣性力と言って、かけっこの加速時にもかかるものです。
これに負けないために、前傾姿勢で前に体重をかけることで、力をつり合わせます。かけっこは『よーいドン』の形ですが、本格的な陸上競技だとクラウチングスタートで、前傾から徐々に体を起こしていくフォームですよね」
――なるほど。
「そしてトップスピードです。電車に乗って安定したスピードで走っていると、加速時のような力って感じますか?」
――そういえば、何も感じません。
「そう。物理学の理論だと、トップスピードに入ればそれを維持するだけでいいんです。先ほど挙げたボルト選手ですが、彼はトップスピードになれば、余計な力を使う必要がないと感覚で分かっている。だから、あっちこっち向いて走っても大丈夫という(笑)」
――でもその維持って大変ですよね。どうすればいいんですか?
「簡単に言えば、地面との抵抗を生まないようにする、つまり地面との接地部分を少なくすればいいんです。電車の車輪は円形になっていますよね。線路との接地はごくわずかになっている。そのおかげで無駄な抵抗を生まずにトップスピードを維持できるんです」
――それって人間の足で言うと?
「つま先で着地することです。かかとから着地してしまうと『かかと→つま先』という順番で足が設置する分だけ抵抗が増えて、ブレーキになってしまう。一方、つま先だけの着地なら抵抗が増えないです。数字で言うと、つま先と地面の角度が『73度』になると、理論上はベストです。
でもさすがにかけっこする小学生にそんなこと言っても『え?』って言われちゃうので『つま先で走ろう!』と習慣づけると、少しずつ変わってくると思います」