サヨナラを浴びた日本Sに逆襲を。

　もうひとつ三上には、昨季において忘れられない出来事がある。それは初出場を果たした日本シリーズで、最後のピッチャーになってしまったことだ。第6戦、11回裏にマウンドに上がった三上は、川島慶三にサヨナラヒットを打たれ天を見上げた。

「あれを経験したからこそ、もう一度、日本シリーズで戦いたい。できれば昨年よりもいい状態で投げてみたい。一度は頂点に立たなければ」

　目立たぬ男は、かすかに語気を強め、そう語った。残り60試合あまり。チームの勝利を信じ、ブルペンの長男坊は、どんな場面であっても飄然としてマウンドへ向かう。