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五輪を連覇中の女子スター選手、
セメンヤを狙い撃ちした国際陸連。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2018/05/09 16:30
リオ五輪、女子800m決勝でのセメンヤ。現時点では圧倒的な強さを誇るものの、自己ベストは世界歴代8位にとどまる。
セメンヤには「男子選手のような強さ」は無い。
シャープは大学で運動生理学を専攻し、テストステロンの値がパフォーマンスにどう影響するかを研究してきた。だからこそ、ハードな練習をしても乗り越えられない壁がある、と信じているのだろう。
だがセメンヤの自己記録は世界歴代8位にとどまり、世界記録から2秒近くも遅いことを見ると、「男子選手のような強さ」はないのである。
セメンヤがテストステロンの値を下げる薬物を摂取した場合、どれくらい記録が下がるのかとても気になるところだ。
新規則の不公平さに声を上げ始めた女子選手たち。
この新規則に対し、リオ五輪の金メダリストたちは異を唱える。
女子走り幅跳びのティアナ・バートレッタ(米国)は「自分の種目が対象じゃないから、自分には無関係と思っている選手も多いかもしれない。でも女子選手の『誰か』がこれで影響を受けていることを忘れちゃいけない」と怒りのコメント。
女子棒高跳びのカテリナ・ステファニディ(ギリシャ)も「なぜ一部の種目なのか。公平性を求めるなら全種目を対象に検査をすればいいのに」と声を上げる。
テストステロン値が高ければ、400mから1600mの距離だけではなく、短距離、投擲、跳躍などの種目のパフォーマンスにも影響するはずだ。ステファニディの意見は的を射ている。
バートレッタは他にも「そもそも性別検査なんか誰も受けていない。そもそも自己申告でしょう」と皮肉をこめた発言もしているが、セメンヤだけが責められる状況を疑問視する選手は多い。