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SONYを辞めて最強オランダで勝負。
ホッケー及川栞、プロ転向の野心。 

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中田徹

中田徹Toru Nakata

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photograph byGetty Images

posted2018/05/06 07:00

SONYを辞めて最強オランダで勝負。ホッケー及川栞、プロ転向の野心。<Number Web> photograph by Getty Images

大企業を辞してでも競技に打ち込みたい。及川栞の強い想いは、女子ホッケー界を引っ張る原動力となるか。

自分がパイオニアだ、みたいな(笑)。

 新たなスキルの1つに、ドラッグクリックというペナルティーコーナーのシュート技術がある。 オランイェ・ロートのトーン・シープマン監督は、ドラッグクリックの指導に定評があり、及川もチームメートとともに、この専門技術をクラブの練習で鍛錬している。

「私は日本代表のペナルティーコーナーのシューターです。自分が得意とする(ペナルティーコーナーの)シュート技術はスイープというもの。これにドラッグクリックをマスターすれば相手を撹乱できる。ドラッグクリックは特殊技術なので、誰でも出来るものではありませんが、監督からは『フォームが良くなった。だいぶ身についてきてるよ』と言ってもらってます。東京オリンピックではペナルティーコーナーからゴールを決めたいですね。楽しみです」

 そんな及川に刺激されてか、とりわけ男子のホッケー選手たちがオランダリーグやドイツリーグの門を叩こうとする機運が高まっているらしく、彼女にも相談の連絡が来るという。

「協会から『及川のやったことを継いで欲しいという思いがある』という話を聞いた時は、『嬉しい。頑張ろう』と思いました。自分がパイオニアだ、みたいな(笑)。他の競技を見ていても、日本人だけのところにいるよりは、やっぱり海外に出て、もっと色んな人から刺激を受けないと。それが競技力の向上や、人間力の向上に繋がるのかな。海外に出ていく選手が増えていったら、日本のホッケー界も変わっていくと思います」

 女子ホッケー・さくらジャパンの目標は、東京オリンピックで金メダルを獲ること。その鍵は「個の力を伸ばすこと」だと及川は言う。

「今、自分が『世界ランキング1位の国』で体感しているのは、やはり一人ひとりの力が高いということ。ホッケーは11対11のスポーツだけど、どれだけチームとして戦おうとしても結局は1対1の戦いになる。そこで勝っていかないと。個々のスキルを伸ばしていって、ステップアップしていけばチーム力向上にも繋がり、金メダルも夢ではなくなると思います。だから、私もこうしてオランダで武者修行しているんです」

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