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大阪桐蔭の深さを知った草むしり。
彼らの目標は「甲子園」ではない。

posted2018/04/11 16:30

 
大阪桐蔭の深さを知った草むしり。彼らの目標は「甲子園」ではない。<Number Web> photograph by Kyodo News

日本最高の野球の才能たちが集う大阪桐蔭。その才能たちが油断なく上を目指しているのだから、強いのは必然なのだ。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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 やはり、終わってみれば、大阪桐蔭だった。

 今年の大阪桐蔭のメンバーの、1人ひとりの力量が抜けていることはわかっていた。

 ポテンシャル、つまり持ち合わせている野球の能力も抜群だったが、昨春のセンバツ優勝メンバーがレギュラーのまま5人も残っていること。つまり彼らはその後、負けちゃいけない、勝って当たり前のプレッシャーの中を丸1年闘い続け、その中には、昨夏の甲子園のような“劇的”な敗北も味わって、そんな「経験値」の高さが何より強みに見えていた。

 なのに、このセンバツ前、私はいたるところで、

「だから、あっさり大阪桐蔭のひとり勝ち……というほど、野球は単純じゃない」

 そんな、わかったような事を放言していた。

 しかし、やっぱり、終わってみれば「大阪桐蔭」だった。

 最初の試合、21世紀枠で出場してきた伊万里高(佐賀)との一戦が始まったばかりの時に、「こりゃあ強いや……」と私は観念した。

大阪桐蔭の野球は単純じゃなかった。

 私が考えていたほど、大阪桐蔭の野球は“単純”じゃなかった。間違いなく、去年の秋より強くなっていた。

 120キロ前後の速球を軸に、さらに緩い変化球を投げてくる伊万里高の投手を相手に、“上から目線”で勝負を挑んでいかない。

「目にもの見せてやる!」とブンブン振り回し、あり余るパワーで圧倒しようとしない。

 もしかしたら、普段の「練習ボール」より遅いかもしれない伊万里高の先発投手のボールを、インパクトの瞬間までじっくり見定めて、センターから逆方向へ、きちんと弾き返す。

 急がず、あわてず、気負わず、こういうボールはこう打てば必ずこういう打球になる。そのことを打者たちがよく知っている。

 1番・宮崎仁斗左翼手や2番・青地斗舞右翼手なら、そういうバッティングも納得しやすい。

 しかし3番・中川卓也三塁手、4番・藤原恭大中堅手、5番・根尾昂遊撃手……プロ注目といわれる昨春のセンバツV戦士たちさえも、強く振り過ぎることなく「オレたちを誰だと思ってるんだ!」と思い上がることなく、実にフラットに、淡々とバッティングの基本をなぞっていく。

【次ページ】 逸材が謙虚になったら隙はない。

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