大相撲PRESSBACK NUMBER
遠藤のブレイクを予想する根拠。
大相撲の「上位定着から3~5年」説。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byTakeshi Honda/JMPA
posted2018/03/13 15:00
一時のフィーバーは落ち着いたものの、遠藤の持つ華はやはり多くの人の視線を集め続けている。
遠藤は格上相手の勝率が非常に高い。
この「何かやるのではないか」の源泉も、データの中に答えがあった。
遠藤は、格上力士を相手にした場合の勝率が非常に高いのだ。
ここまで遠藤は上位総当たりに近い場所を7場所経験している。絶不調だった1場所を除くと、対横綱の勝率は20%とそれほどでもないが、対小結関脇の勝率は43%、そして対大関の勝率はなんと56%である。
しかも遠藤は、上位を相手に自分の相撲を取りきって勝つ。仮に負けても、可能性を相撲の中に見出せる。相撲の中に明確な意図が見え、無策のまま敗れることは無い。
そういう相撲の内容に対して、そして結果に対して「何かやるのではないか」という雰囲気を感じるのではないかと思うのだ。
遠藤は横綱や大関が相手でも勝てる力士ではあったが、15日をトータルで見ると負け越すことも多い力士だった。先の7場所で遠藤は6勝9敗が3回、そして7勝8敗を3回経験している。小結関脇、大関と互角に渡り合いながら遠藤に三役経験が無い理由は明らかだ。
平幕相手での勝率が低いのだ。
上位総当たりに近かった6場所で、対平幕の勝率は49%。なんと大関を相手にした場合よりも勝てていない。三役定着を目指すのであれば負けられない相手に星を落としてしまうのである。
高安や豪栄道に勝っても、平幕に勝っても、1勝は1勝だ。取りこぼしが多い、というよりも相手に会心の相撲を取られてしまうところもひとつの特徴だ。遠藤の懸賞金の多さが、皮肉にも相手力士のモチベーションを高めてしまっているという話もある。
腐らず努力を重ねれば、4年後には花開く。
前みつが取れると強いのだが、取るまでに土俵を割ってしまう。そして突き押しから前みつを取るという新戦法を試している間に大怪我をして、精彩を欠くようになってしまった。
しかしそこから試行錯誤を経て、下位では確実に勝てるようになってきた。そして先場所は前頭5枚目で9勝6敗。その中には鶴竜戦の金星も含まれている。遠藤は進化して戻ってきたのだ。
諦めずに、腐らずに、正しく努力を重ねれば4年後に花は開く。石の上にも三年と言うが、諺の世界の話ではなく現実の話として受け止められたら、多くの力士の勇気になるのではないかと思う。
例えば、琴勇輝。
例えば、千代鳳。
そして、照ノ富士。
怪我をして本来の相撲を取り戻せずに苦しむ力士のためにも、遠藤には期待したいのだ。