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次の大関を昇進速度から予測する。
歴史的な速度で駆け上がる力士も。 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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photograph byKyodo News

posted2018/02/26 07:00

次の大関を昇進速度から予測する。歴史的な速度で駆け上がる力士も。<Number Web> photograph by Kyodo News

小結・貴景勝(右)は十両昇進からまだ6場所。このまま一気に大関までかけ上げる可能性も十分。

大相撲の歴史を創ってきた早熟の天才たち。

 十両以降の出世スピードに話を移そう。

 データを見て気付くのは、前述の通り幕下までにかかる場所数が明確に異なること。それと同時に、大関以上に昇進する力士であれば、関取になってからのスピードは学歴に関わらず概ね変わらないのである。

 十両昇進から大関昇進までの平均場所数は、中卒が28.7場所、高卒が28.1場所、大卒は23.6場所。中卒と大卒でも5場所程度しか変わらない。

 ここからは学歴は関係なくなり、早熟か、平均か、晩成かで分かれることになる。

 早熟の場合、大関昇進まで歩を止めることはない。十両を3.9場所、平幕を6.8場所、小結と関脇は7場所で通過する。日を追うごとに強くならねば、このような曲線を描くことはできない。

 過去の力士であれば北の湖、曙、貴乃花、朝青龍、そして白鵬も早熟に該当する。

 そう、大相撲の歴史を創ってきたのは、早熟の力士たちである。

 今のところ、早熟の可能性を残しているのは、貴景勝と阿武咲だ。

 貴景勝はここまで高卒大関の平均を上回るペースで出世している。幕内在位はまだ7場所。高卒力士が大関になる場合は平均11.7場所かかっているので、歴史的に見ても非常に優秀だ。

 そして阿武咲は高校中退ということもあり、中卒で大関昇進した力士の平均よりも10場所早く十両昇進している。十両在位が14場所と平均よりも8場所長いが、平幕経験3場所で小結に昇進している。

 だが2人ともに来場所は平幕で迎えることになる。次代を担うのであればここが正念場となる。

有力なのは逸ノ城、御嶽海か。

 平均の場合、十両は5場所と早熟とそれほど変わらないが、平幕が13.1場所、小結と関脇に11場所かかる。平幕で一度壁にぶつかり、三役に定着してからもう一段階強くなるのに時間を要するということだ。

 早熟と比べると足踏みしているように見えるが、それでも十両昇進からのタイムリミットは5年だ。

 平均ペースで現在有力な力士は、逸ノ城だ。20歳の入門で計算上は高卒だが、高校卒業後にアマチュアタイトルを獲得して、幕下15枚目格付け出しデビューを果たした変わり種である。

 元々デビューから1年で関脇に昇進し、記録的なスピード出世を果たした力士ではあるのだが、ここ数年は上位の力士に対策を講じられ苦戦を強いられてきた。

 だが昨年後半から守るだけでなく攻める相撲を身につけ、上位で二桁勝利を重ねられるまでに成長した。平幕で17場所を過ごしたが、まだ24歳と十分若い。千代の富士も稀勢の里も、大関昇進は20代半ばだった。何より逸ノ城は大きな怪我をここまでしていないという強みがある。久々に三役で迎える大阪場所に期待したい。

 もう1人挙げておきたいのが、御嶽海だ。過去に大卒で大関昇進した力士は5名。母数が非常に少ない上に、昭和51年生まれの琴光喜以降、大関は誕生していない。大卒力士には非常に厳しい状況が続いていることは事実だ。

 だが数字を見てみると、御嶽海のここまでの昇進ペースは過去の大卒大関とほぼ同じである。幕下を2場所、十両を2場所、平幕を6場所で通過し、三役に定着した大卒力士などそうは居ない。平均ペースに照らし合わせると、猶予はあと関脇で4場所。初場所で悔しい思いをした分だけ、ここから3場所での大関獲りには真実味もあり、期待も膨らむところだ。

【次ページ】 28歳以上での昇進は9人しかいない。

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