テニスPRESSBACK NUMBER
錦織圭、反撃のシーズンが始まる。
ツアー復帰戦の「悔しさ指数」は?
posted2018/02/21 11:30
text by
吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani
photograph by
AP/AFLO
敗れたテニス選手の試合後には「悔しさ指数」がある。
計算式は、大会の規模、ラウンドと対戦相手、プレー内容をもとに選手本人のコメントや話しぶりを基にして、敗戦後から記者会見を行うまでに経過した時間による逓減率なども勘案し……。最終的には、筆者が独断で決める数字だ。
トップ10やトップ5、さらに上を目指していた時の錦織圭選手はどんな相手に敗れた後でも全身から悔しさがにじみ出て、充血した目で会見室に現れる時があった。そのヒリヒリ感は私たちメディア側にも十分に伝わり、悔しさ指数は常に「90」を越えていた。
ただ2017年の錦織選手は世界のトップ5に居続けることに、体も心も疲れ切っていたように見えた。
「自分のプレーも悪くはなかったが、相手が良かった」
「仕方がない部分もある」
「また次があるので、切り替えたい」
錦織選手の負けにもう驚きはなかった。
筆者が主にカバーする米大陸のツアー大会で、準優勝だったアルゼンチン・オープンや初戦敗退を喫したリオ・オープン、さらに米国のマスターズ大会では言い訳めいた言葉を口にするシーンが増えていった。彼の振る舞いから悔しさの絶対温度は下がり、指数は「50」前後に低下していった。
昨年の最後の試合となった8月のロジャーズ・カップ初戦。ガエル・モンフィス(フランス)に逆転負けを喫した後の指数は「30」に落ち込んだ。会見場に現れた地元カナダや海外メディアがいなかったことからも、錦織選手の負けにもう驚きはなかった。
'15年や'16年はあれだけ初優勝を熱望していたマスターズの舞台なのに、さばさばとした姿は寂しくも映った。