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極寒のマイナス20度で7万人が熱狂!
スーパーボウルの魔力とは何か。
posted2018/02/08 11:15
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Getty Images
「ペイトリオッツは野球でいうヤンキースなんだよ。いつも強くて、面白みがない。だからみんな応援したくないのさ。ところが問題は、相手のイーグルスも俺たちのバイキングスを破ってスーパーボウルに進出したってことだ! 地元ミネソタの人間にとって、今回はどっちも応援しにくいスーパーボウルなんだよ」
マイナス20度の寒さに凍えながら「日本からスーパーボウルを見に来たんだ」と一言伝えると、空港からホテルへと向かうタクシーの運転手は熱っぽく語りだした。
15分ほど話し続けたところで、少し語りすぎたと思ったのだろう。「まぁ、俺はサッカーの方が好きなんだけどな」と照れくさそうに笑ったが、絶対に嘘だと思う。
連覇を狙うニューイングランド・ペイトリオッツと、史上初の戴冠を目指すフィラデルフィア・イーグルスの対決となったアメリカンフットボールの頂上決戦、第52回スーパーボウル――言わずと知れた全米最大のスポーツイベントだ。
ハーフタイムショーの豪華さや、中継でのCM1秒当たりのお値段の高さなどは日本でも度々、報じられている。今回もジャスティン・ティンバーレイクがプリンスの曲を歌い、大きな盛り上がりを見せた。たった1試合にもかかわらず、舞台となったミネソタ地域に与える経済効果は約460億円と見積もられている。イベントとしてのクオリティや規模の大きさは、日本でも有名なところだろう。
たった1試合のために音楽も氷像も作る。
一言でスーパーボウルが豪華な大イベントといっても、注目すべきは試合そのものだけではない。「スーパーボウルウイーク」と呼ばれる試合前の1週間以上にわたってさまざまなイベントが催され、数万人に達する訪問者が楽しむからこそ、これだけの経済効果があるのである。
代表的なのはスーパーボウルライブと呼ばれるイベントストリートだ。今回はミネアポリスのダウンタウンにある大通りを、実に6ブロックに渡って封鎖して、音楽ライブを中心に開催された。
グラミー賞受賞の人気アーティストや、アメフト選手を象った極寒のミネソタらしい何台もの氷像やスキー台、スノーモービルによるアクロバットジャンプなどが行われていた。たった1試合のために、これだけの設備が作られるというのは、他のイベントでは見ることができないだろう。