酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
日本の野球を「学年」で考える。
イチロー世代の現役は既に1人だけ。
posted2017/12/27 11:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Getty Images
このオフのプロ野球界の話題の1つに「松坂世代はどこへ行く」というのがある。
フラッグシップたる松坂大輔はソフトバンクを自由契約になって、浪々の身だ。来年、中日がテストをするという。
松坂世代の最多安打者、村田修一も巨人を離れて他球団のオファーを待つ身だ。彼らも37歳。この世代の活躍に一喜一憂してきた野球ファンは、そぞろ歳月を思わずにはおれない。
日本人は「世代」でモノを言うのが好きだ。同世代は同じテレビを見、同じ社会環境で育ってきたから、共通の話題も多い。そして同時期に世に出ることが多いから、ひとくくりで「世代」と言われることが多い。
しかしこの「世代」、かなり特殊だ。外国人には通用しない。例えば同じ1980年生まれだからと言って、広島のブラッド・エルドレッドや西武のブライアン・ウルフに「松坂世代も寂しくなったね?」と言っても「何のことだ?」と言われるだけだろう。
誕生日は2日違いでも、金本と桑田の学年は違う。
そもそも日本でいう「世代」というのは、「学年」の区切りだ。他の国では同じ年の1月1日から12月31日までに生まれた人が「同い年」ということだが、日本では4月2日から翌年4月1日までに生まれた人が「同級生」になり、「同世代」となる。同じ年に生まれたのではなく、同じ「年度」に生まれた人が「同世代」なのだ。
元巨人の桑田真澄は1968年4月1日生まれ、現阪神監督の金本知憲は、同じ1968年の4月3日生まれだ。わずか2日しか違わない。同じ病院で生まれていたら母親同士が顔を合わせていたはずだが、4月2日を挟んでいるために、学年は1つ違う。
その場に居合わせたことはないが、金本知憲は桑田真澄を「桑田」「桑田君」とは呼ばず、「桑田さん」と呼んでいるはずだ。「世代」とは実に日本臭い、独特の区切りだということがわかる。