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26歳の石川遼、まだレースは続く。
PGAシード喪失は「終わり」ではない。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAFLO

posted2017/10/12 08:00

26歳の石川遼、まだレースは続く。PGAシード喪失は「終わり」ではない。<Number Web> photograph by AFLO

石川遼の5シーズンに及ぶPGA挑戦はひとまず終わりを迎えた。しかし彼はまだ26歳になったばかり。キャリアはまだ序盤戦だ。

「ゴルフは、マラソンみたいなものだから」

 石川遼は、もうダメなのかな――? 

 不振続きだった2年半ほど前、アメリカの試合会場で、ある人に何気なく聞いたことがあった。

 その人はすぐに「そんなコト、ない」と言って優しい声で続けた。

「ゴルフは100m走じゃなくて、マラソンみたいなものだから。どんなスポーツ選手よりも、プロゴルファーは寿命が長いでしょう? リョウはまだ何歳? だから、いまダメでも、これから先は誰にもわからない。だから、ヒデキだってどうなるか分からない。それは、ヒデキ本人もよく分かってる」

 言葉の主は、松山英樹の通訳兼マネージャーを務めるロバート(ボブ)・ターナーさんである。

 日本人の夫人を持つボブさんは40年前からゴルフに携わり、1980年代にはセベ・バレステロスが日本に参戦した時のマネージャーを務め、のちに多くの日本人選手の米ツアー挑戦を支えてきた。尾崎直道、丸山茂樹、池田勇太のほか、宮里藍ら女子選手のサポートも自社を通じて行ってきた。

 日本のプロゴルファーとアメリカをつなぐ生き字引のような存在である。だからボブさんの言葉は、僕の胸に重く響いた。

アメリカでは、ミスを乗り越えることに賞賛が送られる。

 石川の前にはPGAツアーのメンバー復帰という、日本人では例を見ない挑戦が待っている。

 普段、PGAツアーのゲームを眺めていて、日米のギャラリーの方の反応の違いを感じることがある。日本のファンのマナーの良さに比して、アメリカではナイスパー、ナイスボギー、あるいはナイス・ダブルボギーといったプレーへの声援が、母国で聞くそれよりもはるかに大きい。ミスへの非難よりも、それをカバーするプレーへ惜しみない賞賛が送られる。

 アメリカ社会は失敗を乗り越えて来た人を、受け入れてくれる社会だという。それはゴルフにも共通しているのかもしれない。確かに本来、18ホール、72ホールのストロークでいえば、イーグルパットもダブルボギーパットも、同じ価値を持つ1打に違いないのだ。

 あのときのボブさんの言葉でいえば、石川は今、マラソンで松山にとてつもない差をつけられている。

 でもそのレースは、もう折り返し地点に到達したのかどうかすら、誰にも分からない。

 レースが終わるとすれば、それは走るのをやめたときである。

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