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マクラーレン・ホンダ、ラスト鈴鹿!
最後まで諦めなかったアロンソの意地。
posted2017/10/10 12:45
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Hiroshi Kaneko
マクラーレンとパートナーを組んで2015年にF1に復帰したホンダにとって、今年の日本GPはマクラーレンと組んで戦う3回目のグランプリだった。
だが、彼らを取り巻く環境は、この1年で大きく変わった。
今年9月にホンダはマクラーレンと継続してきたパートナーシップを、'17年シーズン限りで終了することを発表。今回のレースが「マクラーレン・ホンダ」として臨む最後の日本GPとなった。
そのレースを複雑な思いで戦っていたのが、ホンダの技術者たちだった。
思うような成果を出せなかったホンダにとって、今シーズンのF1は、試練の連続だった。その中でも、ホンダのスタッフを悩ませていたのが、フェルナンド・アロンソとの関係だった。
「こんなのGP2エンジンだよ!」
過去2度ワールドチャンピオンに輝いているアロンソは卓越したテクニックを持つ反面、思うようにならない状況に陥ると感情的になる悪癖があることでも知られている。
2年前の日本GPでは、ストレートで為す術なく追い抜かれると、無線で「こんなのGP2エンジンだよ!」と、ホンダのパワーユニットを、昨年まで直下のカテゴリーだったGP2シリーズのエンジンにたとえ、公衆の面前で批判した。
今年のウインターテストで、パワーユニットにいきなりトラブルが発生すると、ホンダを辛辣なコメントで罵った。
「この問題は起きてはならないトラブルだ。まるでアマチュアだ」
第4戦ロシアGPで、フォーメーションラップ中にトラブルが発生してリタイアを余儀なくされた直後には、「僕は自分の仕事をしている。でも、このチームにはやるべき仕事をしていない者がいる」と、名前は出さなかったが、痛烈にホンダを批判した。
だが、ホンダのF1プロジェクトの総責任者を務める長谷川祐介は、じっと耐えた。
それは、アロンソの苦言には、ホンダを鍛えてくれるメッセージが込められていたからだ。