野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
特典目当て? それとも球団への愛!?
プロ野球ファンクラブの正しい選び方。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/01/27 10:30
1985年以前の弱かった時代から現在まで、どんな時も甲子園にファンが詰めかけていた阪神タイガース。強烈なヤジもチームを愛すればこそ!?
ファンの「ステータスコントロール」に成功した楽天。
そして、それらのようないわゆる「ステータスコントロール」を上手くやってきたのが、楽天ではないだろうか。新球団として発足した'05年からスタートしたファンクラブでは、前代未聞の会費10万500円コース「ブースタークラブ」を設定した東北楽天。設立当初は約3万人だった会員数も、'09年に4万395人、昨年が7万2927人と年々数を伸ばしてきている。その要因を、楽天球団でファンクラブの運営などを担当している大内悠資さんはこう分析する。
「うちがよそと違うのは、コースの幅を多くもたせていること。それと、球場のキャパシティの面もあることから、招待チケットや割引などをあまりやらない代わりに、今までになかったスペシャルな特典やサービスを提供しようとしたことじゃないでしょうか」
楽天の会員種別には5種類のランクがあり、例えば小学生までを対象とした1000円のコース特典にグローブをプレゼントするなど充実しているのだが、最大の特徴はその階級によるサービスの違い。チケットの優先取得の順番や、イベント、受けられるサービス。最上級会員になれば球場内に名前が貼り出されるなど、ファンとしてのステータスを存分に満足させてくれる内容になっている。
ちなみに会費10万円のコースはソフトバンクでも設けているが、こちらはファンクラブ会員継続年数10年超えの会員のみに、案内状がやってくるという一層ハードな内容。その分、入会できたときの喜びは半端じゃないだろう。
ファンクラブに入会する最大の動機はチームへの愛情なのだ!
話を元に戻すが、その楽天ファンクラブ最上級会員、「ブースタークラブ」の'11年度会員が、先着600名がすぐに売り切れるなど、会員数を激増させているという。世間は不景気のどん底だというのに、東北では何が起きているのか?
「星野監督就任後にグンと伸びていますし、新戦力の影響が大きいといえるでしょう。全体でも過去最高、前年比でも105~107%で会員数が増えています。なかでも特に顕著なのがブースタークラブと、最も会員数が多くなっている1万500円のゴールドクラブ。この高価格帯の2つが例年より伸びているのは、試合というコンテンツ自体にお客様の期待が高まっているためでしょう」(大内さん)
特典も大きな魅力のひとつだとは思うが、ファンクラブの会員数、ひいてはファンの数を増やす要因は、チームへの期待、そして大きすぎる愛が基本なのだろう。阪神タイガース営業部の畑野さんも同じようなことを言っていた。
「私たちもいろいろとサービスできるように努めていますが、でもやっぱり、これだけの方が会員になっていただいている最大の理由、それはファンの方の球団を愛していただいている“熱”。それしかないと思います」
やはり、いくら便利だからといって、ファン以外のチームのファンクラブに入るのは何かが違う。球団の人が頭をひねって生まれたサービスは、そのチームを愛しているファンにのみ与えられたプレゼントなのだろう。ただ、まだどこにも入っていない人がいるとするならば、ファンクラブというこの良制度、使わないのはもったいない。