RALLYスペシャルBACK NUMBER
ベテランの円熟味、ラトバラが2位。
WRC復帰戦で見せたトヨタの底力。
posted2017/01/26 16:00
text by
古賀敬介Keisuke Koga
photograph by
Keisuke Koga
「今回の目標は、2台のマシンを揃って完走させること。それに尽きる」
2017年世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロのスタートを前に、TOYOTA GAZOO Racingのチーム代表トミ・マキネンは、控えめな目標を口にした。かつて4度WRC王者となったマキネンは、1999年から4年連続でラリー・モンテカルロで優勝を果たし、「モンテカルロ・マイスター」と呼ばれた男だ。冬季のモナコとフレンチアルプスを中心に開催される、このラリーの難しさと奥深さを誰よりも知っている。
それだけに、どうしても発言は現実的になるのだろう。ましてや、今年のモンテカルロはトヨタにとって18年ぶりのWRC復帰戦であり、マキネンが新たに作り上げたチームと、ヤリス(日本名ヴィッツ)WRCのデビュー戦でもある。WRCを長年戦ってきた強力なライバルと、初戦から互角に戦えるとは、さすがのマキネンも思っていなかったに違いない。
ゼロに近い状態から短時間でヤリスWRCを開発。
今季のWRCはレギュレーションが大幅に変更され、トップカテゴリーマシンであるWRカーは、去年までのマシンよりも大幅に性能が向上。シトロエン、ヒュンダイ、Mスポーツ(フォード)の3マニュファクチャラーは、前年までのデータや経験を基に新世代のWRカーを作り上げた。
対するTOYOTA GAZOO Racingは、ゼロに近い状態から非常に短い時間でヤリスWRCを開発。マキネンの故郷であるフィンランド中南部のプーポラという小さな田舎町で、世界を相手に戦うマシンが設計され、組み上げられた。開発スケジュールがタイトだったこともあり、ヤリスWRCは必ずしも万全とはいえない状態でデビュー戦を迎えることになったが、実戦経験を積み重ねながら改良を続けた。マキネンらチームの主要メンバーはシーズンの中頃に表彰台争いに加わることができれば良いと、どっしり構えて1年を戦う青写真を描いていたのだ。