RALLYスペシャルBACK NUMBER
ベテランの円熟味、ラトバラが2位。
WRC復帰戦で見せたトヨタの底力。
text by
古賀敬介Keisuke Koga
photograph byKeisuke Koga
posted2017/01/26 16:00
冷静な状況判断と粘り強く堅実な走りで表彰台に立ったラトバラ(右)とコ・ドライバーのアンティラ。
WRC通算16勝を誇るラトバラが見せた驚きの走り。
しかし、驚くべきことに、ヤリスWRCはラリー開始早々から上位争いに加わった。開発ドライバーを務めてきたユホ・ハンニネンが初日のSS(スペシャルステージ)2で3番手タイムを記録。そして2日目のSS4まで総合3位につけるという、予想を大きく上まわる活躍を示したのだ。残念ながらハンニネンは次のSS5で凍った路面でタイヤのグリップを失い、立ち木に激突。リタイアとなってしまったが、チームのエースドライバーであるヤリ-マティ・ラトバラがその後を継いだ。
ラトバラは去年の12月にチームに加入し、ごく短期間でヤリスWRCの性能を引き上げた。現役選手の中では2番目に多いWRC通算16勝を誇るラトバラは、舗装路と雪道、そしてアイスバーンが入り交じる難易度の高いコースを巧みに走行。コーナーの途中でエンジンがストールするというマイナートラブルに見舞われるも、心乱すことなく堅実な走りを続けた。
絶対完走が目標のためSSでのタイムはライバルよりも全般的にやや遅かったが、それでも総合4位につけるだけのスピードはあった。そして、競技3日目にトップを走っていた選手がアクシデントにより遅れた結果、ラトバラは3位に浮上。いつの間にか表彰台をうかがう位置に立っていた。
エンジニア陣も致命的なトラブルを発生させなかった。
ラリー最終日デイ4、モナコ北側に広がるフレンチアルプスのSSで、2位につけていた選手のマシンにエンジントラブルが発生。ラトバラはついに2位に順位を上げ、そのままフィニッシュした。トヨタのWRC復帰戦で、表彰台の2番目に高い場所に立つという快挙を成し遂げたのだ。また、リタイア後マシンを修復し、デイ3から再出走したハンニネンも、最後のSS17で3番手のタイムを刻むなど、トップ3を争う力を備えていることを証明した。
ハンニネンの最終結果は16位だったが、マキネンが掲げていた2台完走の目標は現実のものとなった。選手たちの貢献もさることながら、致命的なトラブルを発生させなかったエンジニアにも、称賛の拍手を送るべきだろう。