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DeNAが“Aクラス常連”になるために。
ラミレス監督が語る終盤戦の指針。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byYDB
posted2016/09/05 11:00
就任1年目ながら奮闘しているラミレス監督は、12球団で唯一果たせていないCS進出を成し遂げられるだろうか。
すべての試合が学びの日々だとポジティブに。
「シーズン序盤は本当に難しい時期を過ごした。選手たちのことをよく分かっているつもりだったけど、どう起用すべきかといったことを本当に理解するのにすごく時間がかかったなと思う。選手を成長させる必要があるのか、それとも勝つ野球をするべきなのかという線引きも難しかったしね。5月に入って、選手たちの能力や使い方をより深く理解することができて、いい野球ができるようになった。たしかにミスをおかして負けた試合もあったけど、すべての試合が学びの日々だとポジティブにとらえている」
シーズンが始まれば、与えられた戦力で勝たねばならないのが監督の務めだ。だが同時に、実戦でこそ明らかになる選手の適性を見極める作業も並行して行わねばならない。大小さまざまな判断を迫られる監督の日々において、今季の最大の決断とは何だったのだろうか?
ラミレスが挙げたのは梶谷隆幸の名前だった。
「一番の決断はやはり梶谷のところだったかなと思う。シーズンが始まる前から、梶谷をセンターで固定して2番で打たせると言い続けてきたからね」
「梶谷2番」構想からの脱却とベスト布陣の模索。
攻撃的布陣を象徴する「梶谷2番」構想は、本人の故障もあってすぐには実現しなかった。一軍合流は5月の初め。さっそくホームスチールを成功させるなど、積極果敢なプレーで負けが込んでいたチームを上昇気流に乗せたのもつかの間、梶谷自身はそこから長い不調のトンネルに迷い込んでしまった。
「復帰して1カ月が過ぎて、梶谷はどんどん調子を落として苦悩し始めた。僕が期待する2番・センターの選手としての結果がついてこなかった。それに、彼はバントやエンドランの役割を担わせるような選手ではないのかなということを、時間はかかったが僕も理解していった。結果として元のライトに戻して、打順を組み替えたこと、そこが最も厳しい決断だったと思っている」
試行錯誤を重ねてたどりついたのが、3番・ロペスに始まって、筒香嘉智、宮崎、梶谷と並ぶ中軸打線である。2番打者という課題は残しながらも、1番に定着した桑原、3割をしぶとくキープする7番の倉本など、脇を固める選手たちも粒が揃ってきた。
ある日の囲み取材でラミレスは、「(適性を見極めながら戦っていた)序盤の苦戦は“ショウガナイ”シチュエーションだったけど、今は違う。ベストな布陣で戦いに臨むことができるようになった」と語っていた。CS進出を懸けた最終盤戦への足場は固まったと見ていいようだ。