プロ野球亭日乗BACK NUMBER
野球界の奇妙な「不公平論」を斬る。
70人枠撤廃も、コリジョンルールも。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/07/08 17:30
選手、そしてファンが納得する形を模索するための変化を怖れては何もできない。コリジョンルールはその最たるものだ。
コリジョンルールでも登場した奇妙な公平論。
プロ野球には、ときとしてこういう奇妙な「公平論」がまかり通ることがあり、まさにいま問題となっているコリジョンルールを巡っても「公平ではない」という声が聞こえてきている。
今季から本塁上での走者と守備選手の激突防止のために導入されたコリジョンルールの運用をめぐっては、7月4日の12球団実行委員会で後半戦からの見直しが議題となって、急ピッチで話し合いが進んでいる。
実行委員会では今季の運用例をまとめたDVDで検証しながら、友寄正人審判長が1つ1つのケースに関して、これまでの基準と新しい基準での運用の違いなどを説明。各球団が意見を出し合った。
現行では、守備側の選手が三塁ファウルライン沿いの走路に入れないというのが基準で、これを厳しく運用してきた。その結果、実際に衝突が起こっていないケースでもコリジョンルールが適用されてアウトがセーフに変わるケースがあったのだが、今後は実際の衝突があったかどうかを基準に運用していくという方向が示されている。
大枠において見直しに反対意見はなかったようなのだが、そこでまた「公平論」を言い出す球団があって紛糾したというから、話がおかしくなる。
一斉に新運用に変わることのどこに不公平が?
「一度決めたものをシーズン中に変更するのは不公平になるのではないか」――要は前半戦で現行のコリジョンルールによってアウトがセーフになり、それが勝敗に影響したケースがあったのだから、シーズンの途中で運用を変えたら今度は同じケースで逆の勝敗になるケースが出てくる。だとすると前半戦と後半戦の勝敗に不公平が生じるのではないか、という論理なのだ。
ただ、である。
現行のコリジョンルールの運用に問題があるということは、共通の認識である。ファンの間でも「どうにかならないのか」という意見が渦巻いていることは間違いない。しかもオールスターを挟んで一定期間を空けて、一斉に新しい運用に切り替えるのである。
決して一部だけで運用が変わるわけではなく、12球団が周知徹底した上で切り替えていこうということなのだ。
どこに「不公平」があるというのだろうか?