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北島康介を超えられるか?
五輪の“お家芸”平泳ぎの継承者達。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShingo Ito/AFLO SPORT
posted2016/06/26 11:30
渡辺(左)、小関とも初の五輪。日本選手権後、渡辺は「日本のブレスト界を引っ張っていきたい」と力を込めた。
北島康介を抜いて、初の五輪代表の切符を手に。
そんな小関にとって、大きな経験となったのが今春の日本選手権だ。
オリンピックの一発選考の場であり、ただでも重圧のかかる大会、しかも、北島康介に注目が集まり、より緊張を強いられた。
最初の種目の100mは、優勝したものの派遣標準記録を切れず、代表内定を逃す。だが、続く200mで立て直した。スタートから飛ばすと、2分8秒14で派遣標準記録を破って優勝、初の五輪代表を手に入れたのだ。
レース後、小関は言った。
「北島選手の背中をずっと見てきた立場です。超えられたかは分からないですけど、この試合では超えることができました。自信を持ってリオに行きたいです」
喜びを露わにするでもなく、落ち着いて語った。
中高と、学校の水泳部で育った渡辺一平。
平泳ぎには、もう1人、楽しみな選手がいる。
渡辺一平である。
現在大学2年生の渡辺の経歴も、特色がある。中学、高校と学校の水泳部の部活で練習に励んできた選手であることだ。多くの選手が幼少期からスイミングクラブで育っていることを考えれば、やはり異色である。
それでも高校生のときは、南京で開催されたユースオリンピックの200mで金メダルを獲得するなど頭角を現してはいた。当時から身長は190cmを超え、スケールの大きさとともに注目される存在となっていた。
迎えた五輪シーズン。
日本選手権の200mでは予選で2分8秒83と派遣標準記録を大幅に上回るタイムをたたき出す。決勝では、緊張からだろう、タイムは2分9秒45にとどまったが、北島を終盤に逆転、2位で五輪代表を決めた。
「(隣の)北島さんが大きく見えて、怖かったです」
第一人者の存在を強く意識させられながら、プレッシャーを乗り越えた小関と渡辺は、だからこそ、その経験は財産となる。