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デムーロとルメールが語る日本競馬。
いま評価するライバルジョッキーは?
posted2015/10/29 12:30
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takashi Shimizu
「日本のジョッキーはみんな上手いよね!」
酒が進みはじめると、クリストフが口火を切ってライバルジョッキーのことを語りはじめた。
今年2月の免許試験に合格し、ミルコ・デムーロとクリストフ・ルメールは晴れてJRA所属ジョッキーとなった。
それから8カ月が経過し、ふたりとも日本の競馬にすっかり馴染んでいる。リーディングでも3月からの騎乗ながらミルコは3位、クリストフは7位(10月25日時点)と、その力を存分に発揮している。
Number888号の競馬特集では、そんな彼らに対談で日本の競馬の現状と未来を語ってもらおうと、京都のとある割烹の座敷で酒を酌み交わす、という機会を用意したのだ。
「そうそう、(武)ユタカさんだけじゃないよね。トップジョッキーじゃなくても上手い人はたくさんいるよ」
ミルコも口が滑らかになってきた。
日本の騎手育成に足りないものとは。
ふたりが最近気になっている騎手は、田辺裕信や岩田康誠。
「タナベは生まれ持ってのバランス感覚を感じるし、追ってからも力強い」(クリストフ)
「あとはイワタさん。大きいレースを勝つ集中力がすごい」(ミルコ)
他にも固有名詞はずらずらと。横山典弘、蛯名正義、浜中俊などについて、騎手ならではの視点で日本人の能力の高さを語ってゆく。
だが一方で、日本の騎手ならではの育成上の問題点もあるという。
ヨーロッパと比較して、幼い頃から人が馬と接する機会が少ないことを、2人は指摘した。
クリストフもミルコも競馬一家に育ち、子供の頃から馬に親しんでおり、それが騎手としての下地になっている。対して日本の場合、馬と接する機会が少なく良い騎手が育ちにくい──よく言われることだ。
「でも、馬乗りは才能の影響が大きいから、乗り始めるのが多少遅くても競走では残るべき人が残っていくと思う。問題はそこじゃない。ヨーロッパと比べて日本のジョッキーに足りないのは、海外での経験だよ」