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マートンの“ついで”だった男が。
遅咲きのMVP候補・ドナルドソン。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2015/09/27 10:30
2年連続リーグ最多の失策を喫しながら、圧倒的な打撃でMVP候補に輝くドナルドソン。
「激しいプレースタイルは自分の長所」
「フィールド上では皆の標的みたいになった。当時はフィールドの上にいる全員が敵みたいな感じだったな」
孤立無援とも言える少年時代のドナルドソンを救ったのは、スポーツだった。母親の献身的なサポートを得ながら、車で1時間も離れたスポーツで有名な私立高校に編入すると、彼は野球では投手と遊撃手を兼業。バスケットボールでは身長180センチ前後だったのに軽々とダンクシュートを決め、アメリカンフットボールでは、相手のパスをインターセプトする名手として知られるようになった。その上、彼の高い身体能力は“Football Mentality=アメリカンフットボール選手のような闘志”に突き動かされており、時に相手チームを慄かせたという。
「当時はそんなだから、友だちなんて一人もいなかった。でも、そういった激しいプレースタイルは、今でも自分の長所だと思っている。他のチームが俺のことをどう思うのかなんて、関係ないからね」
観客席から「MVP!」の大歓声があがる人気ぶり。
激しいプレーが身上の彼が、アスレチックスからトレードで“ムネリン”こと川崎宗則のいるブルージェイズに移籍したのは昨オフのことだ。今季はここまで打率.301、39本塁打、120打点(9月23日)でチームのア・リーグ東地区制覇の原動力になっている。地元トロントでは、彼が打席に立つ度に「MVP! MVP!」という大声援が上がるほどの超人気者だ。
「あまり聞かないようにしているんだけど……いいことじゃないかな」
そう地元紙に漏らしたドナルドソン。週明けには今季71打数19安打(打率.268)3本塁打8打点と苦戦しているヤンキース戦が控えている。13打数1安打(=本塁打)と苦手にしている田中が右太もも裏の張りのために登板回避したが、同地区のライバル相手に大人しくしてるつもりはないだろう。
ブルージェイズの快進撃を引っ張る、29歳のMVP候補ドナルドソン。しぶとく粘る田中とヤンキースに引導を渡すのだろうか。