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迫るW杯の裏で進む、もう一つの戦い。
日本ラグビー界の今そこにある危機。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2015/09/05 10:40
秩父宮を埋めた観客達は、日本代表をW杯へ向けて大歓声で送り出した。電光掲示板には、2019の文字も見える。
スーパーラグビー無しの未来は明るいか?
しかし、そのようなスタンスが昂じて、スーパーラグビーに参戦できる可能性が潰えてしまっては元も子もない。
岩渕氏がかつてNumber Webの連載で指摘したように、今のところスーパーラグビーへの参戦は、日本代表の強化、日本ラグビー全体のレベル向上、新たなビジネスモデルの構築、そしてファンの掘り起こしといった点などにおいて、膠着状態を打破できる唯一の現実的なシナリオになっている。
仮にスーパーラグビー参戦への協力を渋り、トップリーグや大学ラグビーを軸とした従来の体制を維持していったとして、その先に日本ラグビーの未来はあると言い切れるのだろうか?
最終報告の回答期限は9月末。
W杯イングランド大会の開幕まで、残すところ2週間あまり。
日本代表の選手たちはすべての雑音を封印し、グラウンド上での戦いに集中しなければならない。だが我々は、日本ラグビー界そのものもかつてないほど苦しい戦いを余儀なくされ、まさに正念場を迎えていることを認識する必要がある。
スーパーラグビーへの参戦と、2019年のW杯開催。いずれが頓挫しても日本ラグビーは壊滅的なダメージを受けるだろう。
本当に大事なのは日本ラグビー界全体の未来なのか、あるいは個の立場や利害関係なのか。日本ラグビーが苦境を乗り越えられるか否かは、この問いに対して、いかなる答えを導きだすかにかかっている。
しかも回答の期限は刻々と迫ってきている。スーパーラグビーに関しては、綱渡りのようなぎりぎりの交渉が続いていくことになるし、W杯絡みで、ワールドラグビーが日本に通告してきた最終報告(代替会場と運営予算案など)の締め切りは9月末だとされている。日本のラグビー界は、未来をかけたもう一つの戦いにも勝利しなければならない。