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迫るW杯の裏で進む、もう一つの戦い。
日本ラグビー界の今そこにある危機。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2015/09/05 10:40

迫るW杯の裏で進む、もう一つの戦い。日本ラグビー界の今そこにある危機。<Number Web> photograph by AFLO

秩父宮を埋めた観客達は、日本代表をW杯へ向けて大歓声で送り出した。電光掲示板には、2019の文字も見える。

ラグビー界とは「そういう」ところである。

 岩渕氏は相手を慮って国名は伏せたが、一部の関係者というのが南アフリカを指すことは明らかだ。

 その意味で、エディー・ジョーンズの件に端を発する一連の出来事は、世界のラグビー界で繰り広げられている政治的な駆け引きの凄まじさを象徴しているとも言える。岩渕氏曰く、

「おそらく読者の皆さんの中には、穿ち過ぎだと思われる方もいるかもしれない。しかし、それがラグビー界の現実なのだ」

 ただし、問題がかくも深刻になってしまったのには別の要因もある。日本側の足並みの乱れだ。

 もともとスーパーラグビーへの参戦に向けては、7月までにチーム名を発表するだけでなく、指導陣も含めて、どのような体制で臨むのかを正式に発表する手はずになっていた。ところが実際にはチーム名どころか、参戦体制も未だに発表されていない。スーパーラグビー側から設定された締め切り(8月31日)に、かろうじて25名分の選手契約書類を提出したに留まっている。

日本側も、決して一枚岩ではなかった。

 なぜこれほど準備が遅れてしまったのか。

 新聞メディアでは、「ジャパンエスアール(スーパーラグビーへの参戦に向けて結成された、日本側の一般社団法人)」の準備作業が後手に回ったこともさりながら、日本ラグビー界の一部に、スーパーラグビーへの参戦に微妙に難色を示すような傾向があったからだという報道がなされている。

 むろん、スーパーラグビーへの参戦に難色を示す人々の気持ちも、理解できなくはない。たとえばトップリーグのクラブ側にしても、あるいは個々の選手にしても、スーパーラグビーに参戦するとなれば、怪我のリスクは確実に増える。故障を抱えた場合の補償問題も含めて、ジャパンエスアールに厳しい条件を突き付けたくなるのは当然だろう。

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岩渕健輔
エディー・ジョーンズ

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