野球善哉BACK NUMBER
浅村栄斗は誰よりも早く塁を蹴る!
打撃に走塁、守備が加わり万能に。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/07/17 10:50
浅村栄斗から中村、森、メヒアにつながる西武のクリーンアップは迫力抜群。その得点力をバットとともに足で支える3番の浅村は相手チームにとって脅威だ。
「打球をみるより、ヒットだと思ったらスタートを切る」
昨年まで浅村についてそうした印象はなかったので、今季浅村の中で何か意識の変化があったのかもしれない。しかし浅村本人に尋ねると、首を横に振った。
「特に意識が変わったってことはないっすよ。普通に次の塁、次の塁とは考えていますけど、特に今年からということはないです。後ろの打者がいいので、セカンドまで行けば、ほとんどの場合点が入る気はしますけど」
今季、浅村の中で走塁について意識の変化はないという。しかし、その後に語った走塁時の意識はとても示唆に富んでいた。
「走塁は判断が一番大事ですね。どこまで出るかというのは決めてないですけど、打った瞬間にヒットだと分かった時は、100%の力でスタートします。打球をじっくりみるよりも、自分で判断してヒットだと思ったらスタートを切る。そっちの方が早いと思うんで、そこだけは決めています」
塁に浅村がいる時、打席には中村、メヒア、森。
奈良原コーチの浅村評も、まさに「ジャッジメントだ」という。
「去年までと今年で、意識の変化は特に感じないんですけど、浅村の走塁について言えるのは、打球の判断がものすごく早いということです。捕球するかどうか、ポテンヒットになるか分からない打球でも同じです。彼の野球観というんでしょうかね、判断の良さは際立っていると思います。走力自体はナンバーワンではないですが、チームでも最高の走塁ができるレベルだと思います」
浅村の走塁は、チームの得点力にとって大きな存在になっている。
というのも、浅村が塁に出たときに続く打者は、中村、メヒア、森といった長打力のある顔ぶれだ。おのずと守備位置は深くなる。しかし、浅村が走塁が上手い選手だというイメージが定着すると、安易に守備位置を下げるわけにはいかなくなる。前で守れば長打が怖く、下がって守れば浅村の脚がフルに発揮されてしまう。この駆け引きは、後半戦の勝負どころで相手チームに大きなプレッシャーを与えるに違いない。