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中田英寿がヴェネチアで楽しんだ、
日本酒とイタリア料理のマリアージュ。
text by
川上康介Kosuke Kawakami
photograph byKosuke Kawakami
posted2015/06/25 11:00
料理を楽しんだ中田英寿と蔵元の面々。藤田シェフと日本酒談義に花が咲いた。
参加したメンバーたちの感想は?
最高級ホテルのレストランだけに、味はもちろん、見た目にも美しい料理ばかり。参加したメンバーも驚いた様子だった。
「こんな素晴らしいホテルで自分が作った酒を飲めるなんて、本当に光栄です。自分のもとをたった子どもが知らないうちに立派になったような感覚ですね(笑)」(『作』の清水清三郎商店株式会社 清水慎一郎さん)
「鹿児島のど田舎で作った焼酎がまさかヴェネチアで世界のVIPに飲んでもらえるなんて、思ってもみませんでした」(『一尚』の小牧醸造株式会社 小牧尚徳さん)
実は、この「アマン カナル グランデ」のシェフは、日本人の藤田明生さん。10年前に修行のためにイタリアに渡り、各地のレストランやホテルで経験を重ね、昨年「アマン カナル グランデ」のシェフに就任。イタリアを代表する高級ホテルのシェフが日本人というのは、帝国ホテルの和食の料理長がイタリア人ということと同じだ。これがどれだけすごいことか分かってもらえるだろうか。藤田シェフは、このプロジェクトの話を聞いて、すぐに「面白い!」と感じたそうだ。
「アマンのイタリアンの基本は、シンプルであるということ。今回も日本酒とあわせるからと変に気負うことをせず、普段ワインにあわせるのと同じ感覚でメニューを作りました。最初にサンプルとしてたくさんの日本酒を試したのですが、こんなに美味しいんだと驚きました。これならワインしか飲まないイタリア人でも絶対に納得するはず。日本人としてとても嬉しく思いますね」
観光客で賑わう水路とはまるで別世界のように静かなガーデンレストラン。ここで日本酒を飲めることは不思議な感覚だが、いずれそれが当たり前の時代が来るのかもしれない。
「こういう高級なホテルやレストランで採用されることで、日本酒のバリューがどんどんあがっていけばいいと思います。こういう取り組みを通して、蔵元の方々が自信をつけ、さらには世界に進出するための課題を見つけてくれたら嬉しいですね」
たくさんの日本酒を飲んだからか、中田英寿もいつもより少し饒舌だ。美味しい酒は人を幸せにする。それを実感したヴェネチアの午後だった。