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あなたは前田長吉を知っていますか?
戦争に奪われた騎手の数奇な運命。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySadanao Maeda
posted2015/04/25 10:50
師の尾形藤吉は、「もしも戦争がなければ、保田隆芳や野平祐二と肩を並べる騎手になったかもしれない」とその才能を惜しんだという。
前田長吉が観戦する、今年のダービー。
ダービーデーの5月31日(日)には、貞直さんが、いつも持ち歩いている長吉の写真とともにダービーを観戦する。また、その日の午前11時から、特別展会場で、貞直さんと私がトークイベントを行なう。
今年は、戦後70年の節目である。戦前・戦時中の競馬は、軍需資源である馬匹の強化・実験の場として発展してきた。が、その存在意義が敗戦によって失われた。今も、売上げの一部が国庫に納められるなどお国のためにもなっているのだが、競馬は「レジャー」として認識されている。つまり、今年は、競馬が純然たるレジャーになってから70年の節目でもあるのだ。
戦争によって命を奪われた若き天才騎手の足跡をたどりながら、愛用した遺品を通じて、生身の人間としての存在を感じる――それが、今の競馬や騎手を見つめなおすことにもなるのではないか。
ひとりでも多くの人に、「前田長吉」を感じてほしいと思う。
特別展「伝説の騎手・前田長吉の生涯」
会期/4月25日(土)~6月28日(日)
休館日/月・火曜日 5月7日・8日
※祝日・振替休日は開館し、直後の平日を休館
競馬博物館公式サイト
http://www.bajibunka.jrao.ne.jp/keiba/event/event_20150410_2.html