MLB東奔西走BACK NUMBER
黒田、斎藤、そしてダルビッシュ――。
MLB通訳・二村健次が愛される理由。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKelly Gavin/Texas Rangers
posted2014/12/14 10:50
レンジャーズでダルビッシュ投手の通訳を務める傍ら、「Speaking Baseball-野球という共通語」というMLB公認ブログで現地からの情報を発信し続けている。
MLBにおけるスペイン語の重要性。
今のMLB球界で、スペイン語は重要な言語だ。
スペイン語圏の中南米から大量の選手が流入するようになり、監督、コーチでもスペイン語を母国語とする人たちが増えている。
二村氏は日本人選手と彼らの間に入り、より的確なコミュニケーションを可能にし、日本人選手たちがチームメンバーと距離を縮める潤滑剤となっている。
二村氏は、どのように通訳の仕事をはじめたのだろうか。
「スペインでの留学後、九州にある陶器関連の商社で2年間働き、ロサンゼルスに戻ってきてからも6年間は家業の陶器を扱っていましたが、他の分野で自分を試してみたくなり、教員免許も持っていたのでコミュニティ・カレッジで教えていました。将来的には大学院の博士課程に進もうと思っていたのですが、大学関係者からドジャースに日本人選手がくるというのを教えられて、博士課程に進むにしても1年間のブランクが空きそうだったので、ドジャースの通訳として働くことにしました」
二村氏が通訳を始めたのは、黒田博樹投手が広島からドジャースに移籍した2008年。当時は斎藤隆投手もドジャースにおり、2人の通訳が主な仕事だった。
本人が語るように、元々は博士課程に進学するまでの1年間限定のつもりで始めた仕事だったが、結局二村氏は2011年までドジャースで黒田の通訳を務め、2012年は黒田とともにヤンキースに移籍、さらに2013年からはレンジャーズでダルビッシュ有投手の通訳を任されている。
通訳だからこそ感じられるMLBという職場の醍醐味。
1年のつもりで始めた仕事が、いまや7年。二村氏を球界につなぎ止めている魅力は一体何なのだろうか。
「ドジャース時代に当時の上司がフロントのいろいろな仕事を教えてくれて、いつしか将来はフロントの仕事に就きたいと思うようになりました。現場で監督やベテラン選手など長年野球に携わってきた方々と直接話をして、人生の教訓になるような話を生で聞けるのも貴重な経験です。そうしたトップレベルの方と直に仕事ができるというのは自分のためにもなると感じています」
そして、二村氏の活躍は通訳の枠に留まっていない。
ドジャース時代には、キャンプ期間中に日本人やラテン系の新人選手たちを対象に英語講師を務めたり、現在もレンジャーズで通訳の傍らフロントの仕事もこなしている。
その一貫として今年からMLB公認ブログ「野球という共通語SPEAKING BASEBALL」を開設し、通訳らしく“言葉”を介した監督、選手たちとのエピソードを紹介している。
野球用語としての英語を学べる他、メディアでは知り得ない情報も多数盛り込まれており、MLBファンには必見の内容だ。