MLB東奔西走BACK NUMBER
黒田、斎藤、そしてダルビッシュ――。
MLB通訳・二村健次が愛される理由。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKelly Gavin/Texas Rangers
posted2014/12/14 10:50
レンジャーズでダルビッシュ投手の通訳を務める傍ら、「Speaking Baseball-野球という共通語」というMLB公認ブログで現地からの情報を発信し続けている。
日本人メジャーリーガーの存在が当たり前になった昨今では、選手以外の日本人スタッフの台頭も目覚ましいものがある。
パイレーツでストレングス&コンディショニングコーチを務める百瀬喜代志氏を筆頭に、アストロズでマッサージ・セラピストとして活躍する岡克己氏。さらにジャイアンツでブルペン捕手をしている植松泰良氏、同じくマッサージ・セラピストの小川波郎氏等々。
日本人選手が所属していなくても、長年にわたりチーム内で確固たる地位を築いている日本人スタッフも今では少なくない。
そして、日本人スタッフとして最もメジャーな存在が通訳だろう。
単に選手とコーチやメディアとの橋渡しをするだけでなく、日本とは違った環境に身を置くことになった選手たちが、野球に集中できるようサポートするのも通訳の大切な役割だ。
二村健次氏が、通訳として非凡な理由。
かつて野茂英雄投手は、ある程度英語を使いこなせるようになってからも、メディアの前では絶対に通訳をつけていた。これは、自分の発言が間違って伝わらないよう最善の注意を払っていたからだ。
つまり通訳は、単に選手が発した言葉をそのまま英語に訳すのではなく、発言内容がきちんと伝わる最適な表現を用いるだけの英語力、そしてアメリカ文化の素養がなければならない。
これまで仕事柄たくさんの通訳と接してきたが、本当の意味で通訳の職務をこなせている人は数えるほどしかいなかった。
今シーズンまでレンジャーズで通訳を務めていた二村健次氏も、そんな通訳の一人だ。
11歳の時に家族の仕事の都合でLAに移住した二村氏は、カリフォルニア州立大学サンノゼ校卒業、ニューヨーク大学大学院修了という経歴が示すように、通訳としてほぼ完璧な素養を備えているだけでなく、彼が他の通訳たちと一線を画す存在である理由は、スペインへの留学経験があることから英語ばかりでなく、スペイン語にも精通していることだ。