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2番は“ゲームを動かせる打順”。
野球を変える「2番打者再考」論。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/06/17 10:40
これまで西武でチームでただ一人開幕から全試合出場を続ける栗山巧。今年はクリーンアップの一角をつとめているが、下位に沈むチームを引き上げることができるか。
「特に初回は、投手は最初のアウトがほしい」
中日の大野雄大は、序盤と終盤で投手の持つ心理が異なるものであるという。
「序盤、特に初回であれば、投手は最初のアウトがほしいというのもありますから、ノーアウトでランナーが出て、打ってこられる方が嫌ですね。『ランナー二塁』は得点圏ですけど、走者が還ってくる確率というのはそれほど高くないし、得点圏打率で5割を打つ選手はそう多くないですよね。そういうことを考えると、序盤の送りバントは助かります。特に僕のようなタイプは、序盤は手さぐりで投げているところがありますから、初回だったら、ワンアウトでホっとできる部分があります」
つまり、「送りバント」の役回りが多い2番が、プレーの選択肢が送りバントに偏っている打者だとしたら、これほど容易いことはないということである。
バントの使い方が勝負を分けた、西武vs.阪神戦。
6月14日の西武vs.阪神のゲームでは、送りバントの使い方が勝負を分けた。
先制したのは阪神。1回表、西武の先発・菊池雄星の立ち上がりを攻めて、1番の上本博紀が中前安打で出塁。大和が送りバントで進めると、3番・鳥谷敬が右翼前へ適時打を放って1点を先制した。
一見、幸先よく阪神が先制したかのように思えるが、西武バッテリーには、1点を失ってからの動揺が全くなかった。むしろ「1点ならヨシ」としてピッチングを続け、乗っていった印象だった。
2回裏、西武は先頭の5番・メヒアが四球で出塁すると、ここで6番の木村文紀には、バントをさせずに強攻策をとる。すると、木村は中堅スタンドへ逆転の本塁打を放った。田辺監督代行は、「メヒアの足を考えて、バントが併殺になって流れが悪くなるのが嫌だった」と説明したが、木村の後の打順が下りていくことを考えると、1死を簡単に与えてしまうのは、得点チャンスを狭めていた可能性が高かった。
その後、双方が1点を取り合って3-2の西武リードで迎えた8回表、阪神がまたチャンスを迎える。
先頭の1番・上本が中前安打で出塁。逆転するためには2点を取らないといけない阪神だが、ここで大和は1回に続いて送りバントを決めた。しかし、一本が出なかった。試合は、このまま、西武が競り勝った。