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<もう一度、代表へ> 大久保嘉人 「遺言――亡き父との約束」
text by
益子浩一Koichi Mashiko
photograph byYoshiyuki Mizuno
posted2014/05/13 15:30
代表に入れるなら、よっしゃ、やってみようかなと思う。
病床の父へ贈ったセレッソ大阪戦の2発の後もゴールにこだわり続けた。5月25日の新潟戦で2発、Jリーグ再開後の7月6日鹿島戦でも2発。13日浦和戦でJ1通算100得点を達成すると、17日大宮戦でもゴールをあげ、広島の佐藤寿人に次ぐ得点ランク2位タイにつけた。
(編集註:大久保は夏場以降もゴールを量産し、昨シーズンは自身初となるリーグ得点王に輝いた)
一時は自ら絶とうとしていた代表の道。その道を再び追い求めようとしている。
「また戻りたいね。今、選ばれたいっていう思いが、すごくある。前に代表にいた時より余裕があるから。試合をしていても、それを感じる。前は焦ってボールを持っていたけど、今は全然焦っていないし、ボールを奪われる気がしない。今年から川崎に来て、点も取れそうな気がするからね。代表でやりたいという思いは、相当に強くなっている」
6月のコンフェデレーションズ杯も全試合を見た。本田に香川、岡崎、清武。前線にタレントが多い中に、これから加わるのは簡単ではないのも分かっている。
「日本はずっと、同じメンバーでやっているでしょ。でも、多少は変わっていくんじゃないかな。そこに俺が入れるなら、よっしゃ、やってみようかな、と思う。(W杯優勝という)目標が高いのもいいしね」
ふと空を見上げる。すると、どこからか声が聞こえてくるような気がする。ペンを持つ力すら、残されていなかったはずの父が、ゆっくり、ゆっくりと、時間をかけて書いたであろう息子への遺言。「ガンバレ 大久保嘉人」の後には、ただ家族の名前のみが記されている。そして、こう続く。
「日本代表になれ 空の上から見とうぞ」