青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER

石川遼が羨む野球選手の肉体。
「あと5cm」の壁をのりこえる術は? 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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posted2011/01/11 10:30

石川遼が羨む野球選手の肉体。「あと5cm」の壁をのりこえる術は?<Number Web> photograph by KYODO

今年もマスターズからの招待状を受け取った石川遼。世界のトップレベルと常に争う意識を持つ彼だからこそ、身体の絶対的な差というものを意識することにもなる

「身長が5cm伸びたら、どれぐらい飛ぶんだろう」

 これには午前中の仕事の内容も影響していたのかもしれない。

 アスリートとして秀でたパワーを持ち、球を打つ感覚にも優れた野球選手は、ときにプロゴルファー顔負けのドライバーショットを見せる。この日、石川と回った福留孝介や以前一緒にプレーしたことのある松坂大輔も平気な顔で300ヤードをかっ飛ばしていった。

 無論、彼らも心血注いで肉体を鍛え上げているからこそできる芸当なのだが、ゴルフを生業とする石川が体と技術を磨いて必死の思いで到達した飛距離を易々と乗り越えていってしまうのである。

「福留さんもやっぱりすごかったし、野球選手とゴルフをした時は体の大きさのことを考えますね。スイングスピードや筋力の強さもあると思うけど、その部分はトレーニングで補えたとしても身長だけは神様にお願いしたくなる」

 それは本職のプロゴルファーが余暇でゴルフをしている野球選手に負けてちゃ恥ずかしいといった感情ではない。

「身長が高くなれば、その分スイングアークが大きくなる。自分の持っている絶対的な体力が上がれば、そんなに力を使わなくても今と同じ力が出せる。今の自分のスイングで身長が5cm伸びたら、いったいどれぐらい飛ぶんだろう」

 野球選手のサイズとパワー。その迫力を目の当たりにすればこそ、プロゴルファーとして磨き上げた自分のスイングを重ねてみたくなる。ないものねだりと知りながら、それは理想を追求し続けるゴルファーとして、アスリートとしての性(さが)かもしれない。

体格のハンディをはねかえす突破口は必ず見つかる。

 石川の現在の身長は175cm。一昨年が173cm、昨年が174cmだったから、1年で1cmずつ伸びている計算だ。しかし、年齢的にはそろそろ頭打ちである。

 タイガー・ウッズは185cmで、現在世界ランク1位のリー・ウェストウッドは183cm。かつてのAONもみな180cm台だった。ゴルフという競技において、身長がアドバンテージとなり得ることは否定できない。以前にマスターズで片山晋呉や谷口徹が苦戦する姿を見た中嶋は「谷口も片山も技術、精神力の問題じゃない。彼らにあと15cmの身長があれば、もっと派手に活躍しているはずだよ」とも話していた。

 ただし、ローリー・マキロイやリッキー・ファウラーといった世界で頭角を現している若手選手はともに175cm。石川と変わらない背丈で世界と伍して戦っている。

 いつか本気でサンタクロースにお願いしたくなる時が来るのかもしれないが、それをはねのける術は必ずある。果たして石川はその突破口をどこに見いだすのか。それはそのまま石川遼というゴルファーのあり方を示す道にもなる。

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