欧州サムライ戦記BACK NUMBER
入場は最後尾、FKはテコでも動かず。
ミランでも“オレ流”を貫く本田圭佑。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2014/01/17 11:05
ミランの練習場を去る本田圭佑。セリエAでは、練習はほぼ非公開で行なわれる。短い期間でチームとの相互理解を深めるには最適な環境と言えるだろう。
空気を読めるエゴイスト、という二面性。
ただし、もし自分のやり方を無理矢理押し通すだけのエゴイストだったら、本田が後半2分にゴールを決めたとき、あれほどチームメイトから祝福されることはなかっただろう。10番のまわりに歓喜の輪ができたのは、わずかな時間で信頼を得ていたからに違いない。
本田が普通ではないのは、エゴイストでありながら、日本人的にきちんと空気も読めることだ。
スペツィア戦では強引にシュートを打てる場面でも、あえてパスを選択するシーンが目についた。攻めあぐねているときは、積極的にパスコースに顔を出して、ビルドアップの潤滑油になった。
空気を読めるエゴイスト――。
モダンな10番と言い換えてもいいかもしれない。
『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』紙が「優雅」と「効率的」という一見相反する表現を同時に使って評価したのも、本田のこういう二面性を感じ取ったからではないだろうか。
まだ1ゴールにすぎない。それも2部相手だ。だが、価値観の地殻変動を予感させるからこそ、地元紙も1面で新加入の日本人を取り上げたのだろう。
本田はただ活躍するだけでなく、新たな10番像を創造するかもしれない。