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トップゴルファーに触れ、己を磨く……。
“アジアンツアー武者修行”の重要性。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2013/11/07 10:30

トップゴルファーに触れ、己を磨く……。“アジアンツアー武者修行”の重要性。<Number Web> photograph by KYODO

ブリヂストンオープン2日目を「67」で回り首位タイに立った丸山大輔は、最終日には2位に3打差の通算10アンダーで4年ぶりの優勝を飾った。

ヒメネス「オレは霧で見えなくたって打てるぜ」

 そして「どんな状況も冷静に――」という心構えは、アジアンツアーでは日本以上に重要となる。世界一美しいとされる日本のグリーンに慣れた選手はまず、海外での不規則なボールの転がりに面食らい、自分のプレーを見失う。東南アジアでは、日差しとスコール対策で傘が手放せないし、突然の悪天候で日中6時間に及ぶ中断もある。

 コースを離れても同じ。毎週国外へ渡航するため、航空会社に預けた荷物が届かないなんてトラブルは日常茶飯事。語学が苦手なら辞書を持ち歩き、すぐに対応しなければならない。その土地に着いたはいいが食あたりで欠場するケースも珍しくないため、抗生物質も彼らの必携品だ。トラブルがつきものの環境に置かれた心と体は、おのずとタフになる。

 小林正則は9月のスイスでの共催試合が印象的だったという。深い霧で知られるこの大会。小林は「見にくくて、どこに打てばいいのか分からなかった」と予選落ちを嘆きつつも、コースへ向かう車のなかで運転手から聞いた言葉から収穫を得た。

「さっき、ミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペインの49歳のベテラン)を乗せたんだけど、彼は『こんな経験は何度もある。コースは知っているし、オレは霧で見えなくたって打てるぜ』って言っていたよ」

 自分の力ではどうにもならない状況と、スマートに付き合うその姿勢に小林は感銘を受けた。

動じない心で、小林は国内メジャー初制覇を果たした。

 1カ月後に迎えた日本オープン。大会は降雨のため、21年ぶりに最終日が月曜日に持ち越されて5日間の日程となった。中止となった日曜はコースに姿を見せなかった選手が多くいたが、小林は「予備日は初めてだけど、こんなのアジアじゃ当たり前」と突然のスケジュール変更に動じず、普段と同じようにティオフの1時間40分前にコースに入り、ウォーミングアップを行なっていた。

 それが翌日のプレーにどれほど貢献したかは分からないが、小林は最終日に見事逆転を果たし、初の国内メジャー制覇を成し遂げた。変則日程となった日本一決定戦で最後まで自分のプレーを貫いたのだ。

 世界トップレベルの米国や欧州と接点を多く持つアジアンツアーは、発展途上の選手に特別な経験をもたらすことがある。不慣れな土地で養われたタフさは、計画通りにはいかないゴルフをプレーする上で、少なからず選手を育てている。賞金額や注目度では日本に劣っていても、高温多湿の環境下で流した汗は、力となって彼らに染みついているのだ。

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