フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
GPファイナルでは「金」も獲れたはず!?
フィギュア日本男子陣の大きな課題。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2010/12/13 12:00
12月9日から北京で開催されたグランプリファイナルで、日本のシニアは男子で織田信成が銀、小塚崇彦が銅を獲得した。GPファイナルにおけるメダル複数獲得は記録的なのだが、手放しで喜んでもいられない。顔ぶれを見れば……本来ならば日本が表彰台を独占してもおかしくないほどの選手が揃っていたのだ。
それなのに金メダルが取れなかったのは、一体なぜなのか。
一つには不運もあった。
ともにGP大会2試合とも優勝してファイナルに進出した高橋大輔と小塚崇彦が、試合前日の公式練習で衝突するという事故にみまわれたのだ。
フィギュアスケートの公式練習では、音楽がかかっている選手が優先というルールがある。高橋の音楽が鳴っている最中だったため、自動的に非は小塚にあったことになる。身体的ダメージは、高橋のほうがつらそうだった。それでも青ざめて謝罪する後輩を気遣い、無理に笑顔を作って応じた高橋は、この事故が試合に影響を与えたとは口にしなかった。だが結果は4位。代わりに、SP4位だった小塚が3位に上がった。
激突しても優勝するチャンと、責任を感じ過ぎてしまう小塚。
「ファイナルの表彰台に戻ってこられたのは嬉しい。でも高橋選手に悪いことをしてしまった。謝りに行ったら明るく大丈夫、と言ってくれたけれど、心残りのある大会になってしまった」
会見でうつむき加減でそう語ったとき、小塚の声は震えていた。
その小塚自身、本来の彼の演技を見せられなかったのは、やはり本人も精神的ダメージが大きかったのだろう。会見の後、優勝したパトリック・チャンが小塚のもとに来てこう慰めた。
「あれは事故だったんだから、気にするなよ。ぼくなんて、アダムにもっとひどいぶつかり方をしたんだから」
アダムというのは、米国のアダム・リッポンのことである。彼らは10月末のスケートカナダの公式練習中、やはり衝突事故を起こしたのだ。リッポンは顔を氷に打ちつけて頬に大きな青あざができるほどの事故だった。だがこの大会でチャンは優勝、リッポンは3位に入っている。それを思うと、やはり日本男子はまだまだメンタル面で弱いと言われても仕方がない。