野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
DeNA3万人、ももクロ6万人。
週末の横浜で交錯した2つの星。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/08/14 08:01
8月4日の敗戦後、ファンがスタンドでサイリウムを振るセレモニーをベンチから見つめるDeNAナイン。
「行為が許されるかどうかは別として、気持ちはわかるよ」
敗戦後、中畑清監督はこんなことを言っている。
「あれだけのお客さんが集まってくれたのに、勝つことができなかった。それが申し訳ないし、悔しかった。だから、このイベントで最後に一回だけでもファンの人と一体になれればと思ってグラウンドに出ていったんだけどね。あの行為が許されるかどうかは別として、その気持ちはわかるよ。応援しているからこそ、怒りが込み上げて来たんだと思う。
運命共同体として、苦しいことに一緒に耐えて、その分、嬉しいことは皆で一緒になって喜ぶ。そうなっていけるのが理想なんだけど、昔からの自分の哲学である『最後まで諦めない野球』。ここまではその姿勢が貫けていると思う。横浜ファンは、本当にどんな試合展開になっても、試合終了まで声援を送ってくれるじゃない。あれは本当に嬉しいし、パワーの源になっている。あとは我々が一日一日をその日しかないという覚悟でこれからも戦っていくしかない」
なかには選手の発奮を促すため、善意と思ってやってしまった人もいるのかもしれない。だが、それで悔しいと発奮する選手は誰もいない。不甲斐ない、なんとかしてほしい、この怒り、伝えたい。そう思う気持ちはわかるのだが。
投げたものは戦う意志であり、応援する意志だ。
こんなことが昔あった。38年ぶりの日本一になった前年の'97年。ヤクルトと優勝争いをしていた9月の天王山2連戦の初戦で石井一久にノーヒットノーランを喰らい優勝が絶望的となった2戦目。ビハインドのまま終盤に雨で中断した際に、スタンドから大量にメガホンやらゴミが投げ捨てられ、それを諦めていない選手たちが拾いに走ったいわゆる「メガホン投げ入れ事件」。
あの事件を知っているベイスターズファンは、その後はどんなヒドイ負けを喫しても、絶対にグラウンドにものを投げ入れるようなことはしなくなった。その行為により、本来応援するはずの自分たちが早々に試合を諦め、選手の足を引っ張っていたことを知り、死ぬほど恥じたからだ。
投げたものは、ただのサイリウムじゃない。戦う意志であり、応援する意志だ。
あのイベントの最中、もっとも悔しさを滲ませていた石川キャプテンは後日こんなことを言っていた。
「悔しい……というか情けない。自分に腹が立っていました。あのスターナイトという企画は本当に素晴らしかったと思います。過去最高のお客さんが来て、同じブルーのユニフォームを着て応援してくれて、鳥肌が立ちましたよ。最後まで声をからして応援してくれた人は本当に悔しかったと思う。俺も本当に悔しかった。
サイリウムが自分たちに向かって飛んできた時の心境? ……言葉では簡単には表現できませんよ。素晴らしい雰囲気の中で、みんな勝ちたかった、そこに応えられなかった。ファンの人も悔しいし、俺たちも悔しい。いろんな思いが渦巻いて……とにかく辛かったですね」