ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
“歴戦の勇士”坂田健史は、
なぜ亀田大毅に完敗したのか?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/09/27 12:07
接近戦でもアウト・ボクシングでも、亀田大毅は積極的に戦い試合の流れを作り続けた。完璧な作戦勝ちだった
接戦、激戦の連続で坂田は想像以上に衰えていた!?
ところがこの試合、坂田は終盤の4ラウンドをすべて失った。数年前ならあり得ない話だ。ピッチを上げようと盛んにネジを巻きながら、一向にペースの上がらないマラソン走者のように、終盤の坂田は疲れ切っていた。かつてはたくましくも見えた愚直に前に出て拳を振う姿が、この日は状況に応じてスタイルを変える大毅に比べ、ナイーブにすら映った。接戦、激戦の連続で力の落ちた30歳に、伸び盛りの21歳を崩す力はもはやなかったように思えた。
亀田陣営に負けると「こんなはずじゃなかった」となる。
こんなはずじゃなかった─―。
思えば昨年11月、WBC世界フライ級タイトルマッチで興毅に敗れた内藤陣営も、この日の坂田陣営と同じように頭を抱えていた。もう少し打ち合うのではないか。あそこまでアウトボクシングに徹するとは思わなかった。すなわち、こんなはずじゃなかったと。
己の力を知り、敵の力を知る。あらゆる想定をした上でベストの戦術を選び出し、試合で実行できるようにトレーニングを繰り返す。時に敵の裏をかき、勝利の可能性を1%でも引き上げる。当たり前のように思えるが、内藤を見ても、坂田を見ても、そう簡単にできることではない。少なくともこの2試合を見る限り、シミュレーション能力が勝敗を大きく左右したと言えそうだ。