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メキシコ戦、岡崎慎司のゴールには
苦悩の一年が凝縮されていた――。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2013/06/28 10:30
メキシコ戦のゴールで岡崎は代表通算35得点。「『オレは守備よりも攻撃の選手だ!』というのを見せたかった」とコメントした。ドイツ1部マインツへの完全移籍が決まり、この夏から合流することとなった。
試合に負けたのだから、喜ぶことなんて出来ない。
それでも、コンフェデレーションズカップのメキシコ戦、岡崎慎司が右足で遠藤保仁のクロスを押し込んだ意味を、見落としてはならない。
「誰でも決められるゴール」
「遠藤に助けられたゴール」
そんな簡単なフレーズで片づけられてしまいそうなあの一撃に、岡崎の1年が詰まっているのだ。
ブラジル戦から3日後、イタリア戦の前日、試合を控えているときにはあまり景気の良い話をしない岡崎が、記者の目を見て、こう断言した。
「次からはもう、全部右足でいくっていう意識でシュートを決めます」
メキシコ戦ではこの宣言通りに、右からのクロスを右足でシュートを放ち、ゴールを揺らしてみせたのだ。
決定機に「大事に『面で』」当てにいくのが悪い癖。
このゴールには、伏線があった。
まず挙げるべきは、6月15日のブラジル戦、後半4分のプレーだ。右FWの清武が「イメージ通りだった」と語ったクロスに、センターフォワードを務めていた岡崎が倒れ込みながら左足でシュートを放ったが、ゴール右に外れてしまった。
岡崎はこのシーンを強く悔やんでいた。
「実は、チアゴ・シウバに触られてたんですよ。あそこでは右足でシュートに行くべきだったんです。ドイツ杯のときもそうだったし。うーん……。あれは俺の悪い癖なんです。やっぱり、大事に『面で』当てにいっちゃう。右足を振っちゃえば相手よりも先に触ってゴールに入るのに……」
右サイドからのクロスに対して、遠い方の左足を出せば、ボールを『面』でとらえられる。それゆえに、ミートする確実性は上がる。ただ、岡崎から見て左側でマークにつく相手ディフェンダーからすれば、シュートをブロックしやすくなる。
一方、右からのクロスに、近い方の右足を出せば、ボールに触れる角度は小さくなる。『点』で合わせることになるから、ミートする確実性は下がる。ところが、相手ディフェンダーからは遠い方の足でのシュートとなるので、彼らに触られる可能性は低くなるのだ。