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“殺し合い”と“MMA”の真骨頂。
長南亮と引退する池本誠知の激闘。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2013/05/09 10:30

“殺し合い”と“MMA”の真骨頂。長南亮と引退する池本誠知の激闘。<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

4月28日に開催されたDEEP・大阪IMPホール大会のメインイベントでの長南亮(左)と池本誠知。グラウンドでは体格に勝る長南が終始上になる展開で、池本は2Rに長南のヒジ打ちで流血するも戦いをあきらめることはなかった。

エネルギーを振り絞った池本と、モードを変えた長南。

 引退試合だからこそ、池本は最後の一滴までエネルギーを振り絞っていた。それに対し、生き残らなければならない長南は闘いのモードを“殺し合い”から“MMA”に変えた。打ち合いが最高潮に達したところで、カウンターのタックルを鮮やかに決めたのだ。

 打撃、投げ、寝技、すべてを使いこなし、一つの技術にこだわらず局面ごとにベストな選択をするMMAの真骨頂。それが長南のもう一つの持ち味であり、ふだんジムで会員に教えていることでもある。長南が上になって最終ラウンドを終え、判定3-0で勝利。“ケンカ”で始まり“格闘技”で終わった試合だった。

劣勢だったはずの池本に持ち味を引き出された長南。

「不細工に壊しにいってた自分が相手に一歩押された形になり殺す気から格闘技に戻されました」

 長南はブログにそう綴っている。殺しにいった長南が、劣勢だったはずの池本に持ち味を引き出される。そんな不思議な現象が、この試合では起こったのだ。

 その結果として、長南は秋に予定される自身の引退試合を殺気と技術を兼ね備えた“フル装備”で迎えることができるはずだ。池本からの予期せぬ挑戦は、長南がベストな形で引退試合を迎えるために必要なものだったのかもしれないと、今では思える。

 エモーショナルな引退試合は、次の引退試合につながるものだった。そしてそれは、格闘技ブーム全盛期を知る選手が相次いでリングを去るということでもある。

 長南、池本だけでなく、4.26DEEP・TDCホール大会では戸井田カツヤも引退を表明した。昨年12月には、PRIDEウェルター級GP優勝者の三崎和雄の引退興行が開催されている。

 そこに寂しさを感じない者はいないだろう。だが、何かが終わるということは、別の何かが始まるということでもある。戸井田、長南はすでにジム経営で成功しており、三崎はスポーツサプリメントメーカー・HALEOのスタッフとして格闘技界のバックアップに精力的だ。池本もジムで選手を育成する一方で加圧トレーニング、エステなどの女性専用サロンを経営している。

【次ページ】 格闘技ブーム世代の引退は、前進への通過儀礼。

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