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“香川の本音”と“ゼロトップ”の真相。
日本代表欧州遠征、密着レポート。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/10/20 08:02

“香川の本音”と“ゼロトップ”の真相。日本代表欧州遠征、密着レポート。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ブラジル戦、ハーフタイムにザッケローニ監督から出た指示について「もっと前に出て行けと監督に言われた。怖がらず、こういう相手と(試合が)できるのは素晴らしい経験なんだ、と言われましたね」と試合後にコメントした香川。

香川が切望しているポジションと布陣はどういうものか?

 あるいは、“KAGAWA”の名前が今のようにヨーロッパで知れ渡っていなかった2010年8月、南アフリカW杯の余韻が残る時期のこと。「実際にW杯の舞台でやってみないとわからないし、実際にやってみたら違うとは思うんですけど」と控えめに前置きをしてから、香川はこう話していた。

「日本代表でも、速いパス回しと良い距離感でプレー出来たら、イメージを共有できる選手が前のほうに揃っていたら、組織をいかしたサッカーが出来るイメージが自分の中ではある。セレッソでやっていたようにね。セレッソのシャドー3人で、試合に出してくれたら……。もちろん、もっともっと守備をしないといけないだろうけど、セレッソでやっていたような絶妙な距離感でやれたら中盤でもポゼッションできると思う」(※ちなみに、このときの3シャドーというのは、香川、乾、家長昭博の3人。清武と香川が実戦で一緒にプレーした時間は長くない)

 ブラジル戦、日本の選手たちは、細かくて速いパスを回し、絶妙な距離感でプレーできた時間があった。

「シンジはプロフェッショナルとして責任感が強いがゆえに、ミスを恐れてしまうところがある」というセレッソ大阪時代の恩師クルピの至言を引くまでもなく、香川が日本代表のユニフォームを身にまとっているときに気を抜いたことなどないだろう。

 だが、代表でプレーするとき、チームとしての細かいルールに縛られたり、左サイドで窮屈さを覚えて、喜びが足りなかったことならある。そして、それがプレーに表れ、クラブでの活躍が代表で見せられていない、という批判が投げかけられたこともある。

 トッププレーヤーは批判されるもの。

 香川はそう考えているが、この状況を変えたいとも思っている。 

 トップ下で、しかも、この日の流動的な前線だったら、香川はやりやすさを感じるだろう。ただ、香川の思い通りにすべてが進むなんてこともありえない。怪我人が出ることもあるし、メンバーの入れ替えが進む可能性だって十分にある。 

 でも、この日、香川がその肉体から醸し出していた喜びについてはどうだろう。ザックジャパンの基本フォーメーションを作っていく、一つのヒントになるのではないだろうか。 

2014年のブラジルW杯は、「あっという間に来ると思う」。

 ブラジル戦の後半44分、香川の言葉を借りれば、試合の行方が決まっていた時間帯のこと。相手にカットされて、日本のコーナーキックが宣告されたとき、香川は一目散に転がったボールを拾いにいった。まるで、少しでも長く、この試合を続けていたいとでも言うかのように……。

 2014年のブラジルW杯まではもう2年を切った。長いのか、短いのか。そう問われた香川は即答した。

「あっという間に来ると思う」

 そして、こう続けた。

「うーん……僕自身、ただでさえマンチェスターで厳しい状況なので、その戦いの中でやらないといけない。そういう意味では、刺激を受けたし。0-4というのはやっぱり悔しいですね」

 ここで日本代表での戦いはひとまず休憩に入り、香川にはマンチェスター・ユナイテッドの一員としての戦いがまた始まる。

「明日からまたやっていくという意味では、何か一つ手ごたえというか、刺激として得るものがあった。それを次のマンチェスターでの試合で活かして頑張っていきたいと思います」

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