逆転スリーランか!?　そんな悪夢もよぎった刹那……。

　苦しい時期を乗り越えたからこそ、森福は今季も短期決戦で「持ってる」ところを見せられる。

　それはCS初戦であり、ファイナルステージ進出を賭けた15日の第3戦もそうだった。

　3対1と2点リードで迎えた8回のマウンドを託された森福は、この回先頭の熊代聖人にファーストとライトの間にポトリと落ちる不運な二塁打をくらい、いきなりピンチを作る。

　続く浅村栄斗と秋山翔吾を打ち取り2死とするが、3番の中島裕之に対し慎重に攻めすぎ四球。第2打席で本塁打を放っている中村剛也まで回してしまう。

　しかし、この日の森福は冷静だった。

「レギュラーシーズンでは中村さんとは相性もいいほうだと思っていたし、厳しいところに投げようと意識して……」

　2球目の外角低めのスライダーは、彼が言うように厳しいコースではあった。しかし、中村にバットの芯で捉えられセンター後方に大飛球を飛ばされる……。逆転スリーラン。そんな悪夢もよぎった刹那、フェンスぎりぎりで打球は失速し、センターフライとなった。

「持ってる」もの、それは「絶対的な信頼感」。

「あぶねぇ」

　森福は驚きの表情を見せながらグラブをポンポンと叩き、マウンド上でそう呟いた。

「（打たれた瞬間は）『行った』ってリアクションでした。スタンドに入らなかった理由はよく分かりません。でも、思い切り腕を振った結果でしょうね」

　中村の想定するコースよりもボール1個、もしかしたら半分かもしれないが、外で変化した。それで、中村のフォームを若干なりとも崩すことができたのだろう。

　自らピンチを招きながらも17球でこの回を無失点で切り抜けた森福は、いたずらっぽく笑いながら報道陣に向かってこう言った。

「ある意味持ってるのかな？　『持ってる』って言ってほしいんでしょ」

　短期決戦で森福が見せた、強烈な3度の「持ってる」。もし、他者がそこに主語を補うとすれば、それは「絶対的な信頼感」になるだろう。

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