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ソフトバンクの短期決戦と言えば?
“持ってる男”森福允彦への信頼感。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/10/16 12:10
昨年の日本シリーズ第4戦で見せた「森福の11球」を彷彿とさせる投球内容で、今季のCSファーストステージ第1戦、第3戦において見事に投げきった。
この日のマウンドで思い出していた、あの日。
だが、当の本人の意識は違っていた。
「普段よりアドレナリンが出ていました。最高潮に興奮していましたね」
興奮した――。
このマウンドで森福は、あの熱投を思い出していた。
「ノーアウト満塁になったとき、藤岡(好明)さんたちともブルペンで話をしていたんです。犠牲フライでも同点だし、日本シリーズと一緒ですよね。思い出していました。ある意味、『持ってる』と思いました」
「持ってる男」を印象づけた日本シリーズの11球。
短期決戦で最初に森福が「持ってる男」を印象付けたのは、2011年の日本シリーズ第4戦だった。
2対1と1点リードの6回、5回まで中日打線を3安打1失点に抑えていたホールトンが突如乱れ、無死満塁。絶体絶命のピンチでマウンドに上がった森福は、小池正晃を三振、平田良介をレフトフライ、谷繁元信をショートゴロに打ち取り、無失点で切り抜けた。
森福の11球。
かくして彼のその快投は、日本シリーズ史に残る名場面となった。
この一戦で「持ってる」ことを証明し、大ブレイクを果たした森福は、今季、さらなる躍進を遂げる。
「もう1年、60試合投げてみろ」
自主トレを共にするなど、「師匠」と呼べる存在でもある杉内俊哉からそう言われたことが、今季、彼の活力源にもなっていた。
8月から9月にかけて走者を背負う苦しいピッチングが多々あったが、それでも本業の中継ぎ、そして、不慣れな抑えでも17セーブを挙げるなどフル回転し、2年連続60試合登板を果たした。