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ソフトバンクが薄氷のCS進出決定!
下克上の予感漂う、「足」という武器。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/10/05 12:30
明石健志(写真)の他、パ・リーグ盗塁数ベスト10のうち、5人をソフトバンクの選手が占めている(10月4日現在)。
選手の底上げは、Aクラス入りの一つの要因に過ぎない!?
もちろん、それらをカバーする選手はいた。
投手では大隣憲司が4年ぶりの2ケタ勝利を挙げ復活し、高卒ルーキーの武田翔太は7月のデビュー以降8勝をマークするなどチームの救世主的存在となった。中継ぎ陣も新加入の岡島秀樹に藤岡好明、柳瀬明宏がその穴を埋めた。打線も、新外国人のペーニャが21本塁打と4番の働きを見せ、明石健志、今宮健太、柳田悠岐がブレイクの兆しを見せた。
選手の底上げの成功。肯定的な意見ではそうなるだろう。だが反面、それらは言ってしまえば結果論でしかない、との見方もできる。
ソフトバンクがソフトバンクとして、Aクラスという最低限の成績を残すことができた絶対的な要因は他にある。
それは、足だ。
2ケタ盗塁を記録した選手が6人も揃う圧倒的な走力。
チーム合計180盗塁と圧倒的な数字を叩き出した昨季に続き、今季も142と断トツでリーグトップの盗塁数を記録した。成功率も昨季の78.9%に引けを取らない74.7%と、走塁技術の高さを見せつけた。
ソフトバンクの盗塁のすごさは、この数字が特定の選手だけに頼ったものではないことだ。
チームトップの本多の33を筆頭に明石(25)、松田(16)、長谷川勇也(16)、福田秀平(13)、城所龍磨(10)と2ケタ盗塁を記録した選手が実に6人もいる。ここが重要なのだ。 その意味について、元阪神の赤星憲広が現役時代、こう持論を展開したことがある。
「個人的に2度、3度失敗してしまえば『次もダメだったらどうしよう』と精神的に追い込まれるため、無意識のうちに『3S』と呼ばれる『スタート』『スピード』『スライディング』の全て、もしくはどれかが遅れてしまうこともあります。一般的に『足にスランプはない』と言われていますが、結果的にスランプになってしまうわけです。
じゃあ、それがチームにどんな悪影響を及ぼしてしまうのか? 阪神の場合、盗塁数でいえば僕ぐらいしか稼いでいないので、その僕がスランプに陥ってしまうと得点のチャンスが減ってしまうし、攻撃パターンの選択肢も限られてくる。その点、盗塁が多い選手が何人かいれば、ひとりがマークされていても補うことができるんです」