セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
4-2-3-1はもう古い!?
守備重視のセリエAで3バック革命。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/10/04 10:31
昨シーズン、鉄壁の守備でユベントスの無敗優勝を後ろから支えたボヌッチ(左)、バルザーリ(左から2番目)、キエッリーニ(左から3番目)のCB3人衆とGKブッフォン(右)。
ザックの持論は「3バック=“MFを1枚増やす”」。
3バックには憂慮すべき弱点もある。4バックと比べてCB1人がケアすべきスペースは広い。相手が中盤のサイドからゴール前を目掛けて、3人のCBの間を斜めに切る高速パスを1本通すだけで、とたんに危機的状況を背負うことになる。
わずか1年前、ガスペリーニ監督(現パレルモ)の下で導入を試みたインテルでは、クラブ側や選手たちに3バックへの免疫がなく、新任指揮官も忍耐を欠き、早々に頓挫した。3バック導入では、何よりDFの適応能力と指揮官の指導力が問われる。
昨季の優勝監督コンテから遡ること13年、3バックを用いてスクデットを獲得した指導者といえば、誰あろう現日本代表監督ザッケローニだ。昨季、リーグに再び3バック流行の芽が出始めたとき、現地紙上で持論を展開している。
「3バックとはチーム作りの哲学の問題であり、その運用にはまず能力をもったDFが必要だ。私が率いたミランには、コスタクルタとマルディーニという一流DFがいた。現在の3バック回帰は、中盤での数的優位を得たいというプレー意識の現れだ。“3バック=FWを1枚増やす”ではない。“MFを1枚増やす”なのだ」
守備偏重主義の3バックはもはや前世紀の遺物である。
戦術大国イタリアを一歩出て、欧州に挑むユベントスは、CLに出場する32チーム中唯一の3バック採用チームだ。ビラノバ体制のバルセロナも4バックに戻った2012年現在、3バックはやはり異端中の異端だが、昨季のCL王者チェルシーとの初戦をドローでしぶとく切り抜けた指揮官コンテは、グループリーグ突破へ自信を深めたにちがいない。
冒頭では流行と書いたが、その実態は理論と実践に秀でたイタリアの指揮官たちの確信を伴うものだ。セリエAの3バック回帰は、もはや一過性のブームで終わりそうにもない。
両サイドにDFを並べたかつての3バックは、ほぼ5バックとイコール。守備偏重主義の象徴だった。しかし、21世紀流の3バックは攻防一体だ。先駆者であるマッツァーリは言う。
「戦術はいつでも、必ず進化する」
異端はもはやメインストリームになりつつある。戦術の新潮流、3バック革命を存分に楽しみたい。