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開幕投手は絶対エースで行くべき!?
斎藤佑樹で勝負する栗山監督の深謀。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/03/24 08:01

開幕投手は絶対エースで行くべき!?斎藤佑樹で勝負する栗山監督の深謀。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「普通に考えたら開幕投手は武田勝でユウキが勝負するような内容ではない」として「スマン」とエース格の武田勝に謝ったという栗山英樹監督。斎藤は「開幕を任せてもらえるという話をいただき、経験したことがないほど身の引き締まる思いがしました」と答えている。

抜擢に応えて飛躍した、オリックスの金子と広島の前田。

 実績が乏しい若手を開幕投手に任命することは勇気がいることだ。だが、栗山監督の目論見が達成されれば、斎藤が大化けする可能性は十分にある。

 というのも近年、開幕投手をきっかけに大きく飛躍したケースがあるからだ。

 ひとつは、2008年のオリックス・金子だ。

 それまでの2年間でたったの7勝だった金子だが、平野佳寿の故障で大役を任された開幕戦では7回1失点。西武の涌井に投げ勝ち、白星を手にした。この年10勝をマークすると、'10年には17勝で最多勝。金子はエースの座へと駆け上がった。

開幕戦の勝利は若手投手にとって大きな自信となる。

 すでにローテーションを担っていた前田だが、この年のオープン戦では17回を投げ防御率4.76と春先は絶不調だった。それが、開幕戦で中日・吉見との投手戦を制すると、彼自身、「勝てたことで勢いに乗った」と言っていたようにリーグ最多の15勝をマーク。最優秀防御率、奪三振のタイトルも獲得し、沢村賞にも輝いた。

 開幕戦は「エース同士の潰し合い」と呼ばれているが、金子や前田の例でも分かるように、相手エースを倒せばより自信を付ける材料にもなる。

 仮に敗戦投手となっても、大きな傷口にならないこともメリットのひとつと言える。早実の先輩である荒木大輔も、プロ4年目の1986年の開幕戦で敗れたが、この年に8勝を挙げ翌'87年には10勝をマークしている。

 つまり、斎藤にとっての開幕マウンドは、失うものは何もない、というわけだ。

 それと同時に、開幕戦のみならず開幕3連戦を見越した戦略も見えてくる。

 これも、栗山監督の狙いと言える。

開幕戦を“1/144試合”と捉えるチーム戦略。

 一般的に、「開幕戦は1/144試合ではない」と捉えている監督は多い。その認識に否定的とされている前中日監督の落合博満が川上憲伸を4年連続で、元楽天監督の野村克也でさえ岩隈久志を3年連続で開幕投手にしたように、指揮官というのはどうしてもオープニングゲームをエースに託したいものだ。

 開幕戦を1/144と捉えるのは、むしろ、今年の栗山監督のようにエース級ではない投手を指名した年に限るのかもしれない。

 川上がブレーブスに移籍した'09年、落合監督はそれを実践した。

 大方の予想では、前年に10勝を挙げている吉見が開幕投手のはずだったが、マウンドに立ったのは、過去に5度しか先発を経験していない浅尾拓也だった。その浅尾の好投で初戦をものにした中日は、第2戦以降も吉見、チェンで勝利し3連勝を飾った。

 開幕カードが西武の日本ハムも、斎藤で涌井を潰すことができれば、武田勝、ケッペルまたはウルフと計算できる投手が揃っているだけに、3連勝の可能性も高くなる。

【次ページ】 両リーグの予告先発と開幕戦の醍醐味。

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