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岡田監督の秘蔵っ子、「ハマの番長」。
F・マリノス栗原勇蔵の代表復帰。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/04/05 10:30

岡田監督の秘蔵っ子、「ハマの番長」。F・マリノス栗原勇蔵の代表復帰。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

F・マリノスの松田直樹から、その実力とメンタルの強さを高く評価されている栗原。周囲からは「第二の松田直樹」とも称されている

 セルビア戦の日本代表メンバーに“俊輔効果”で快進撃を続ける横浜F・マリノスから4人が選ばれた。このなかで山瀬功治とともに久々に代表復帰を果たしたのが、センターバックの栗原勇蔵である。

 岡田ジャパンでは1試合も出場していない。栗原はオシムジャパン初戦となった'06年8月のトリニダード・トバゴ戦で代表デビューを飾ったものの、それ以降は2年前に岡田ジャパンの代表候補合宿に一度呼ばれた程度。それが今季、ケガ明けの第2節から2試合連続の完封勝利&ゴールという結果を残して、W杯メンバー発表前の最後の試合に呼ばれたのだから、大学生で選出された永井謙佑に次ぐビッグサプライズと言っていい。

 岡田武史監督は就任以来ずっと中澤佑二、田中マルクス闘莉王のバックアップを探してきた。寺田周平、高木和道、山口智、槙野智章、水本裕貴、菊地直哉、岩下敬輔……と10人以上もの選手がテストされてきたが、監督のおメガネにかなわなかったのか長期間継続しての招集はなかった。そしてようやく現れた“第3の男”岩政大樹も東アジア選手権を最後にメンバーから外れている。裏を突かれる場面もあった韓国戦のパフォーマンスと無関係ではないのかもしれない。ここに来て白紙に近い状況となったゆえに、栗原に思いがけないチャンスが回ってきたというわけだ。

「彼は個の強さを持っている」と指揮官は期待を寄せる。

 これまでほぼノーチャンスだった男が何故、このタイミングで招集されたのか。指揮官は「今回が栗原を呼ぶタイミングだったというだけのこと」と言葉を濁したが、マリノススタッフの見立てが実に興味深い。

「岡田さんはマリノスの監督時代、栗原に期待をかけていた分、厳しく育てていました。だから今なお栗原には人一倍厳しい目を向けていると思います。長所、欠点すべて分かっているから、テストしなくても大体力量は分かる。だから簡単なことでは呼ばれないし、ひょっとしたら他の選手よりハードルが高かったのかもしれない。岡田さんの考える基準を栗原がようやくクリアできそうだから、呼ばれたのではないでしょうか」

 '03年にマリノスの監督に就任した岡田は当時、ユースから昇格して2年目だった栗原を先発で抜擢するなど早くからその才能を買っていた。松田直樹、中澤とコンビを組ませて経験を積ませ、センターバック出身の指揮官自ら手ほどきしてマリノスの中心選手にまで成長させている。その岡田は最近の栗原をメンバー発表会見の席でこう評価した。

「身体能力に関してはジャンプ力、スピードとすべてにおいて日本人離れしていて、これは世界でも通用すると思う。キック力もかなりのものを持っている。これまではポジショニングや、常にアラート(相手の攻撃を警戒した動き)の状態でいられるかというところで問題があったが、最近そういうところも改善されてきた。最終的には、組織だ何だと言っても、ポーンと蹴ってくるボールを跳ね返すという部分では個の力である程度勝たないと話にならない。そういう意味では彼は個の強さを持っている」

【次ページ】 「ハマの番長」が世界を相手にケンカを仕掛ける!

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