フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュアのシーズン開幕だが……。
五輪王者・ライサチェク欠場の衝撃。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT
posted2011/10/21 11:30
この夏、国内外の大物スケーターが集まって新横浜スケートセンターで開催された「フレンズ オン アイス」で華麗な演技を披露していたエヴァン・ライサチェク。バンクーバー五輪後は、世界選手権も欠場し様々な活動を行ってきたが、現役続行の意思だけは表明していた
USFSAが選手に払ってきた賞金以外の報酬の意味。
そんな中でUSFSAが、テレビの視聴率を左右するほどのスター選手を試合に引っ張り出すために、試合の賞金以外に報酬金を支払ってきたのは今にはじまったことではない。
かつて米国で絶大な人気を誇ったミシェル・クワンは、長い間スケートアメリカや全米選手権に出場していたが、USFSAはそのたびに彼女に高額の報酬金を支払ってきたと言われている。
だがクワンがスターだった当時に比べて、米国のフィギュアスケート人気は格段に落ちた。クワン以降、大衆受けするスター選手が登場しなかったことがその大きな理由のひとつである。ライサチェクが五輪で金メダルを獲得しても、一般社会ではほとんど話題にならなかったのだ。
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現在のUSFSAはテレビスポンサーを得るのに四苦八苦し、以前のような百万ドル単位の放映権契約など、夢のまた夢というのが現状である。
現役を続行し、ソチ五輪を目指すというライサチェクだが……。
ライサチェクGPシリーズ欠場の裏には、このような「オトナの事情」があったのだ。
アスリートが金銭的な理由で試合を欠場というのは、少々寂しい話ではある。だがどの職種も、能力のあるものは高い報酬を得るのが当たり前の世の中。「アマチュア」アスリートにだけ、清貧を求めること自体が時代錯誤なのだろう。
「こんなことになってとても残念。だがトレーニングはこれまで通り続けていく。全米選手権までには、連盟と合意に達したい」
シカゴ・トリビューン紙上でそうコメントしたライサチェクだが、こうした生臭い内情をあえて外に出したからには、話はかなりこじれたのではないかと推測する。五輪チャンピオンというタイトルに相応しい条件を要求するライサチェクと、無い袖は振れないというUSFSA。9月に「ソチ五輪を最終目標にする」と宣言したライサチェクだが、今後彼の競技活動がどのような展開を見せるのか予想は難しい。