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なでしこが耐えに耐え、五輪を確保!
北朝鮮戦ドローに見た「底力」。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byTamon Matsuzono
posted2011/09/09 11:50
試合終了の笛を聞いた直後の澤穂希。試合後に「絶対に勝てたと思う試合なので、自分たちのミスで失点してしまったのはすごく悔しいです。ピッチコンディションも良くなくて、焦って蹴ったりして自分たちのペースがつかめなかった」と吐露した
後半になって、ますます強まった北朝鮮の圧力。
後半に入ると、北朝鮮の圧力はますます強まった。
開始早々から日本を押し込み、出足の鋭さも衰える気配がない。
しかし37分、岩清水からのフィードに永里優が何とか合わせた至近距離からのボレーシュートを北朝鮮GKが前にはじき、これがDFに当たってオウンゴールとなった。迫りつつあった終了の笛、そして日本の時間帯とは決していえない中での失点は、敵にショックを与えるには十分なはずだった。
ところが、若い北朝鮮戦手たちは下を向かない。アディショナルタイムに入った後半47分、日本のゴール前を横切って流れてきたクロスに対する近賀のクリアが小さく、これを拾った北朝鮮がチョ・ユンミ、キム・チョランとつないで同点ゴールを挙げたのだ。
なでしこは「最高」ではないが「最低限」の結果は残した。
先制しながら最後の最後で追いつかれた後味の悪い試合となったが、
「選手は疲れた中でよくやってくれた。チームのコンディションを考えれば引き分けたことでよしとしなければならない。勝ち点1を取れたことはいい結果なのかもしれません」
という佐々木監督の総括は偽らざる本音だろう。それほど北朝鮮は積極的で、最後まで足を止めなかった。大会初戦でオーストラリアを1-0で破ったのも決してフロックではないことを証明してみせた。
そして日本の側も、後半40分過ぎからボールキープして逃げ切りを図ったにもかかわらず勝利を取り逃がしてしまった不手際はあったものの、若くフレッシュな相手に押し込まれながら最終的に勝ち点1をしっかり確保した戦いぶりは評価されていい。リーグ戦形式での争いでは、こうした上積みが1でもあるのと0に終るのでは、大きく明暗を分けることがある。なでしこは「最高」ではないが「最低限」の結果は残した。
そしてこの試合の後、別会場で行われた試合でオーストラリアが中国を破り、日本のロンドン五輪出場が決定したのだった。