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今、ドイツで最も熱い
サッカー・カルチャー誌。
~『11 フロインデ』の魅力~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySports Graphic Number
posted2011/08/28 08:00
『11 FREUNDE』 2011年8月号 5.5ユーロ
意外なことに、ドイツでは全国で売られているサッカー専門誌が一つしかない。日本でも名の知られた『キッカー』誌はその名前とは裏腹にスポーツ総合誌だ。バスケットボーラーも、F1レーサーも登場する。
唯一のサッカー専門誌、その名を『11 フロインデ』という。サッカーと、サッカーにまつわるカルチャーをテーマに扱った月刊誌で、この国のスポーツ関連の雑誌の中で、いま最も勢いがある。
最新の8月号は、斬新だった。
開幕したばかりのブンデスリーガの特集が組まれているのだが、表紙は映画『スター・ウォーズ』のパロディ。『スター・ウォーズ』の登場人物の顔の部分にブンデスリーガにゆかりのある人物の写真をはめ込んでいるのだ。ハリソン・フォード演じるハン・ソロがラウールで、ルーク・スカイウォーカーがクロップ監督。そして、ダースベイダーには鬼軍曹の異名をとるマガト監督。マガトの不敵な笑いがダースベイダーの黒いシルエットに似合っていた。
作り手も面白がっているのがわかる各クラブのマスコット特集。
もっとも、レイア姫にマリオ・ゴメス、C-3POにロッベンが起用された理由は一向にわからない。やっつけ仕事なのかと疑いたくもなるが、それでも、この表紙を手にするとニヤニヤせずにはいられない。
表紙をめくり、読み進めてみると各クラブのマスコットの特集が組まれている。しかし、マスコットに関する基本的なデータなどの説明は皆無で、写真が大胆に掲載されているだけ。長谷部の所属するヴォルフスブルクの狼のマスコット「ヴォルフィー」が肉屋で淡々とポテトを食べていたり、香川がプレーするドルトムントの蜂のマスコット「エンマ」が“働き蜂”よろしく一生懸命に車を洗っていたりする。かわいくて、シュール。辛さと甘さが同居する冷麺のように、味がある。写真の中、マスコットの傍らには担当編集者が一般人に扮して写っていて、雑誌の作り手側も面白がっている様子が伝わってくる。読み手が楽しいと感じないわけがないだろう。