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フロンターレ名物部長が語る、
川崎の武器は“郷土愛”。
~バナナと算数ドリルを売る理由~
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph bySports Graphic Number
posted2011/08/02 06:00
『スポーツでこの国を変えるために 僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』 天野春果著 小学館 1400円+税
バナナ売りと算数ドリルづくり。
サッカーとは一見何も結びつきそうもない事業が、クラブの地域貢献につながっている。
「川崎に住んでいる人たちに地域への愛着をより深めてもらうためにはどういう仕掛けをしていけばいいか。バナナやドリルなど企画のベースにあるのは、自分たちの住む町に対する郷土愛なんです」
クラブと町の理想の関係を模索する過程をつぶさに描いた『僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』の著者は「川崎フロンターレ サッカー事業部プロモーション部部長」の肩書きを持つ天野春果氏。斬新なアイデアを持ち込み、川崎フロンターレの地域密着を推し進めてきた“名物部長”だ。
狙いは川崎の町に「フロンターレ」が溢れていくこと。
町と人々とクラブの密接な関係。等々力陸上競技場(ホームスタジアム)の改築費集めを一つの目的とした“かわさき応援バナナ”は市内の量販店で販売され、売り上げの一部が川崎市に寄付された。また、背番号の分数計算など選手を登場させて子供たちに楽しく算数を考えさせるドリルは行政の協力を得ることで毎年の作製、販売も可能になった。
バナナにもドリルにもクラブのロゴが入る。川崎の町に「フロンターレ」が溢れていくことが天野の狙いでもある。
「サッカーに興味のない女の子でもドリルを楽しそうにやってくれました。今までフロンターレに関心のなかった人々にも身近に感じてもらうことができた」
選手による絵本の読み聞かせ会、新人選手の商店街挨拶回り……市民のあらゆる層にアプローチをしてきた姿勢は成果として表れている。2002年以降、毎年約2000人ずつ1試合平均の観客動員数を伸ばし、'10年度は1万8562人を記録。J1の18クラブ中7番目となるが、全体数より2万5000人収容のスタジアムに平均7割以上の観客を集めていることに着目すべきだろう。「フロンターレ熱」は確実に高まっているのだ。